boidマガジン

2017年04月号 vol.3

染谷将太 インタヴュー

2017年04月21日 17:41 by boid
いよいよ明日4月22日から映画『PARKS パークス』(瀬田なつき監督)が公開されます。その公開を記念して『PARKS パークス』に出演する俳優・染谷将太さんのインタヴューを掲載します。井の頭公園で見つかった音楽をめぐる物語が描かれるこの作品がどのように作られていったのか、そして染谷さんの『PARKS パークス』あるいは瀬田監督の作品に対する思いを語ってくれました。
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過去に接することで、未来を想像できる~染谷将太インタヴュー


取材・文=黒岩幹子


 "井の頭公園で見つかった音楽の物語”。その物語はプロローグを経て、井の頭公園の傍らに建つアパートで暮らす女子大生・純(橋本愛)の元をハルと名乗るひとりの少女(永野芽郁)が訪ねてくることで始まる。ハルは純が住んでいる部屋に50年前に住んでいた女性=自分の死んだ父親の昔の恋人・佐知子の行方を捜していた。純とハルはアパートのオーナーから聞いた佐知子の現住所を訪ねるが、ちょうどそこに帰ってきた佐知子の孫・トキオ(染谷将太)から彼女が1ヵ月前に亡くなったことを知らされる。だがその数日後、トキオが佐知子の遺品からオープンリールのテープを見つける。3人がそのテープを再生すると、そこから流れてきたのはハルの父親・晋平と佐知子の歌声だった。3人は途中で途切れてしまったその曲を完成させることにする――。
 50年前に井の頭公園で録音されたひとつの歌(「PARK MUSIC」)を、その作り手や歌い手に導かれるようにして出会った3人の若者が蘇らせようとする。彼らがその歌を作っていく過程で、その曲や自分の過去や未来とどのように向き合っていくのか。それが映画『PARKS パークス』の主題だ。

 『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(10)、『5 windows』(12)、『5 windows eb』『5 windows is』(ともに15)、そして今回の『PARKS パークス』に出演、瀬田なつき監督作品に欠かせない俳優のひとりであり、また『彼方からの手紙』(08)や『あとのまつり』(09)など瀬田監督が劇場映画でデビューする前に撮った学生時代の作品もほとんど観ているという俳優の染谷将太は、本作の企画について聞いたときのことを、「もともと瀬田さんの映画は音楽と深い関わりがある、音楽が欠かせない映画だと思っていたので、音楽が題材となることできっとすごく膨れ上がる作品になる気がしました」と語る。
 撮影に入る前にも、本(台本)読みの他、劇中で音楽を演奏するシーンや、純とハルとトキオが曲作りをしようとする場面の準備が先行して進められたという。

「劇中にいくつかみんなで即興で演奏するようなシーンだったり、ラストのほうにミュージカルっぽいシーンもあるんですけど、事前にその準備が結構ありましたね。やっぱり(純とハルとトキオの)3人が自然と曲を作ろうとなったときに、セッションしてるような場面を作らなきゃいけないわけじゃないですか。たとえば逆にうまくリズムが合っていないところもあるだろうしってことで、そういう部分をリハーサルで練習しつつ固めていきました。瀬田さんの台本って結構あいまいに書いているところが多くてですね、3人が初めてスタジオに集まるシーンでも、台本には"自然と音が湧いてくる”としか書いてなかったりするんです(笑)」

 さらに主人公の3人が作っていく、この映画の劇中歌でもありテーマ曲でもある「PARK MUSIC」でトキオ=染谷はラップを披露しているが、そのラップの歌詞(リリック/ライム)作りにも彼自身が関わっている。私たち観客はすでに園子温監督の『TOKYO TRIBE』(14)でラップをする染谷将太の姿を観ていたが、『PARKS パークス』ではどのようにラップに取り組んだのだろうか。

「さすがに脚本を書き始めた段階ですでにトキオという人間はラップをやる人間だという設定だったとは思いますけど、果たして染谷がラップできるからラップにしようと思ったのか、脚本を書いていくなかでラップをトキオにやらせようと思ったのか……たぶん前者だとは思いますけど(笑)。でも、こういう役がひとりいるのはこの映画にとっていいことだと思ったので、ラップを元々やっててよかったなと思いました。瀬田さんはラップの経験ないじゃないですか。なので台本に書いてある歌詞はこんな感じの内容っていう参考が書かれていまして、もちろんそれはラップにできない歌詞でして、ここからラッパーの方とかが入ってこれをベースに直していくんだろうなと思っていたら、ある日音楽スタジオに呼ばれたんです。そうしたら瀬田さんと(音楽担当の)トクマルシューゴさんがいて、『どうしよっか?』って言われて、『あ、これ俺も一緒に考えるんですか?』って(笑)。で、結局自分でいろいろ直しました。ラストのミュージカル部分のライムはceroの高城晶平さんがちゃんと作ってくれたんですが、途中のフリースタイルでラップしているシーンは自分が書いたので、サントラのクレジットには自分の名前も入ってます。実はTHE OTOGIBANASHI’Sっていうヒップホップグループと友達なんですけど、彼らのファーストアルバムに1曲だけ参加していて、その時に自分で(リリックを)書いたことがあったんです。たぶんそれもあって、(瀬田監督に)書けると思われていたんだと思います」

 このラップの話ひとつからも、おそらく瀬田監督がトキオという役をあらかじめ染谷将太に演じてもらうことを前提にして脚本を書いたこと、そして監督の彼に対する絶大な信頼が窺い知れる。そして、この「信頼できる存在」というのは、『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』におけるみーくん、『PARKS パークス』のトキオという役柄に対しても当てはまることだろう。『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』での彼は、幼少期のある事件に共に居合わせた"みーくん”のいる世界だけしか信じられなくなったまーちゃん(大政絢)に"みーくん”として寄り添い続けようとし、『PARKS パークス』の彼は曲作りやライヴに尻込みする純を盛り立て、亡き父の物語を探すハルを見守っている。

「瀬田さんの映画って女の子が輝く映画じゃないですか。もちろん可愛らしい女性が出演されているんですけど、瀬田さんらしい可愛さみたいなものが出ると思うんですよね。それが映画の魅力でもあると思っているので、そのために僕が何かをしてるわけではないですけど、そうなったらいいなとは常に思っています。瀬田さんの映画って切なさを感じるんですよね。哀愁を感じるというか。どこかこうポップで楽しいんだけれども、すごく寂しい気持ちになるんですよ、自分はいつも。その寂しさっていうのは、瀬田さんの映画に出てくる女性から漂っているもので、それがきっと瀬田さんらしい魅力の引き出し方になっているような気がします」



 もうひとつ、瀬田作品の特徴とも言えるのが、映画の舞台となる街、ロケーションである。黄金町や山口、恵比寿などひとつの街を舞台にした『5 windows』シリーズを筆頭に、その作品ではある都市空間が常に印象的な役割を果たしてきた。今回の『PARKS パークス』のもうひとつの主役も吉祥寺という街であり、井の頭恩寵公園という100年の歴史を持つ公園だ。染谷将太が井の頭公園に来たのは、「本当に久々で、幼稚園以来でした。祖母と一緒にアヒルのボートに乗った思い出があるんですが、それ以来」だったというが、そのように井の頭公園というのは昔からたくさんの人たちの思い出とともに残り続けている、「変わらない場所」だといえる。それはこれまでの瀬田作品の舞台となってきた、豊洲やお台場といった開発の進む港湾地域、あるいは黄金町や恵比寿のような古くからあるものの新しく生まれ変わりつつある街とは違う点でもあるだろう。

「さっき言った瀬田さんの映画に感じる寂しさみたいなものっていうのは、明らかに時間の流れを激しく感じる街並みで撮っているからっていうのもあると思うんですよね。そこにあったものがなくなっていったり、それまでなかったものが急にどんと目の前に現われたり、そういう変化の激しさから寂しさを感じてた部分もあったと思うんです。今回は確かにロケーション的にはそういう部分はなかったですけど、設定や登場人物の関係性によってすごく出てた気がします。過去と現在を行き来するけれど、過去と現在で景色が変わらないっていうのが逆に寂しさを感じたり。『ああ、あの人たちはここにいたんだ』っていうことを現代の人たちがその場所を歩くことで感じられる。そういったことを感じながら新しい音楽を作るっていうことに、自分は寂しさを感じましたね。その音楽(「PARK MUSIC」)は昔の60年代の音から始まって、現代へとつながっていくわけなんですが、メロディラインは変わらないんだけど、明らかに変わっている。それはすごく素敵なことだし、それを聴くのも自分が参加するのも楽しかったですし、映画を通してそういう行為をやれるっていうのは魅力的に感じました。
俺はあまり後ろを振りかえる人間じゃないんですが、未来のものと接することはできないじゃないですか。でも過去のものと接することで、未来と接した気になれるんですよね。現在のことってたぶんあまり冷静に見れてないと思うんですけど、過去のものだったらもっと冷静に見れる。そうやって過去のものに接することで、先はこうなるんじゃないかっていうのを感じられるんですよね。音楽であったり映画であったりはもちろん、そういう表現ごとじゃなくても以前から残っているものと接するっていうのは、未来を想像する材料になるんじゃないかと思っています」


 「PARK MUSIC」は劇中の中でも、公園での演奏シーン、ライヴでの演奏シーンと変化していき、晋平と佐知子によって"新たに”歌われたのち、公園の園内放送用のマイクを通してハルに向けて純が歌い出すところから始まるミュージカル的なシーンへと至る。50年前に作られた歌が同じメロディラインのまま、しかし新しい歌になって公園の中に響き渡るとき、公園も50年前、100年前と同じ場所でありながら、新しい場所へと変化する。"オープン・ザ・パーク”。そして映画は再びプロローグに戻り(時制的には進み)、エピローグへと接続される――。


PARKS パークス
2017年 / 日本 / 118分 / 監督・脚本・編集:瀬田なつき / 音楽監修:トクマルシューゴ/ 出演:橋本愛、永野芽郁、染谷将太、石橋静河、森岡龍、佐野史郎
©2017本田プロモーションBAUS

4月22日(土)よりテアトル新宿、 4月29日(土)より吉祥寺オデヲンほか全国順次公開
公式サイト



撮影:マチェイ・コモロフスキ

染谷将太(そめたに・しょうた)
1992年、東京生まれ。9歳の時に『STACY』(01)で映画デビュー。2009年、『パンドラの匣』で長編映画初主演。2011年のヴェネチア国際映画祭に出品された『ヒミズ』で新人俳優賞を受賞。主な出演作に『WOOD JOB!~神去なあなあ日常~』(14)、『ドライブ イン 蒲生』(同)、『寄生獣』(同)、『ソレダケ/ that’s it』(15)、『映画 みんな!エスパーだよ!』(同)、『海賊と呼ばれた男』(16)、『3月のライオン』(17)など。主演映画『空海 KU-KAI』他、公開待機作も多数。また、2013年には短編映画『シミラー バット ディファレント』(13)を自主製作で監督。現在、山口情報芸術センター(YCAM)製作による監督第2作を進行中。

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