boidマガジン

2017年04月号 vol.3

Animation Unrelated 第40回 (土居伸彰)

2017年04月21日 17:43 by boid
世界中のアニメーションの評論や上映活動を精力的に行なっている土居伸彰さんの連載「Animation Unrelated」第40回です。連載前回の記事でも少し取り上げられていたデイヴィッド・オライリーの『EVERYTHING』やミヒャエル・フライの『プラグ・アンド・プレイ』など、短編アニメーション作家が制作したゲームが注目を集めています。そこで今回は土居さんが、オライリーがアニメーションからゲームへと移行した経緯や、短編アニメーションとインディ・ゲームの共通点を考察しながら、新しいゲームの世界を紹介してくれます。

デイヴィッド・オライリー『EVERYTHING』



YOU ARE EVERYTHING


文=土居伸彰


 今回の連載、MISIAの曲みたいなタイトルを付けてしまったが、デイヴィッド・オライリーがプレイステーション4(まだ日本語は出ていない…)で先月リリースしたばかりの新作ゲーム『EVERYTHING』のある局面で画面にデカデカと現れる文言である。

 デイヴィッド・オライリーについては、これまでの連載でも何度か取り上げてきたが、CGアニメーションの分野において革新をもたらした人物だ。オライリーは、現実のリアリスティックなシミュレーションの方向ではなく、ポリゴンやグリッチといった現実模倣のためには消し去ってしまいたい「素材」の段階におけるCG表現の可能性を切り開いた。それは、マンパワーとマシンパワーが必要な「金持ち」のCGではなく(リアルな表現を行うにはとにかく金がかかる)、個人だからこそできるCG表現の探求でもあった。
 オライリーにとって、現実模倣のCGには「美学」が不足していた。「美学」は「スタイル」と言い換えてもよい。もしくは「一貫性」。CGは写実的でなくとも、作品が一貫した法則によって編み上げられていれば、たとえ見た目がリアルでなくとも、人はそこに何らかの「現実感」を感じとる。オライリーのそんな考え方は、代表作である『プリーズ・セイ・サムシング』を観て、僕が訳した彼のテキストを読んでもらえれば、よくわかるだろう。この考え方によって、オライリーは数多くのCGクリエイターたちに新たな表現の道を切り開いた。

『プリーズ・セイ・サムシング』の日本語版『おねがい なにかいって』
(思えばこれが僕の字幕翻訳初体験だった)


 オライリーはその後大傑作『エクスターナル・ワールド』をリリースしたのち、本格的な短編アニメーション制作からは遠ざかっている。そのかわり、人気カートゥーンシリーズ「アドベンチャー・タイム」初のゲスト監督エピソードを担当したり、スパイク・ジョーンズの『her/世界でひとつの彼女』の映画内ゲームをデザインしたり、世界的に注目を浴びる作品でキーとなる「名脇役」的な役割をしばらく担当していた。

 そしてオライリーはいま、ゲームを作っている。2014年にその第一弾として突如としてリリースされた『MOUNTAIN』(たった一ドル!)は、山シミュレーター。冒頭の簡単な質問(「あなたの人生最初の思い出は?」など)にドローイングで回答を入力すると、それに従って、プレイヤーそれぞれの山ができあがる。あとはこの山が宇宙空間のような場所をゆっくりとくるくる回りつづける様子をただ眺めるだけ。
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