boidマガジン

2018年05月号

PAN ASIA -Project Mekong- 第2回 (Young-G)

2018年07月19日 10:56 by boid

stillichimiyaのYoung-GによるアジアにおけるHIP HOPの現地調査「PAN ASIA -Project Mekong-」第2回目です。バンコクを中心にリサーチをするなかで出会ったレゲエバンドのSrirajah Rockersそして来月に来日をするラッパーのJUUについて。



PAN ASIA -Project Mekong- 第2回 バンコク放浪 その1 Srirajah Rockersのライブ


文・写真=Young-G


バンコクに来ておよそ1ヶ月が経った。最初は新生活に必要なテーブルや椅子、ほうきやコップ等の生活用品を近所の安い市場で買い漁ったり久しぶりのタイ料理屋台、レコード屋巡りを満喫していた。バンコクナイツの撮影以来およそ一年二ヶ月ぶりにバンコクに舞い戻り、近所の風景もたった少しの間だが変化が見て取れた。高い建造物があまり見えなかった目の前の小さな通りの先に、地上40階程の建造物が夕日の光を遮るように高く伸びていた。
これが近代化というやつか。通りの雰囲気には不釣り合いな程の高い建物だった。そしてそこの建設現場の作業員達で朝、昼、夕方はごった返していた。
Soi48と空族、一宮のみんなとバンコクで合流しワンメコンの撮影も終えて、みんなが帰る頃にはバンコクの生活にも慣れていた。そうするとクラブやディスコ、レコード屋、蚤の市、ナイトマーケット、色んな場所に出掛けた。



 
 


スクンビット、プラカノンにあるDJ TO-RUさんという日本人が経営する「Goja」というギャラリーでDJしたり、タイで一番古い通りといわれ、最近ではライブハウスやギャラリー等が増えているCharoen Krung(ジャラングルン)通りのPOMPというギャラリーでOptrumの伊東篤宏さんとBeat Liveという形で共演させてもらったりもした。
クラブや日本食レストランが沢山あるトンローの12X12、BEAM、GAMEOVER、Maft Saiの手がけるstudio lam、カオサンはずれのOverstay(名前通りすごい箱だった……)、スラサックのJAM、シーロムのSafe room…まだまだあった。
遊ぶ場所には事欠かなかった。日本ではあまり見られないようなDJやアーティストのライブも見ることが出来た。他にも日本からもShhhhhさん、Livingdead君、Izponさん、後関好宏さん、DJ KENSEIさん、沖縄の赤土クルー等がタイに滞在中に遊びやライブに来ては一緒に遊ばせてもらっていた。
そんなある日、マーケットの中にあるライブハウスでずっとライブを見たいと思っていたタイのレゲエバンドSrirajah Rockers(自分も田我流やカイザーソゼの現場でお世話になっている光風さんや内田直之さんと交流があるタイのレゲエバンド)のライブがあるとの情報を聞きつけ、現地で友達になった日本人のKin、Teppと一緒にチャオプラヤー川の少し西にある、 チャンチュイという場所に向かった。


日曜のそこはタイのオシャレな若者達で賑わっていた。古い大きなジャンボ機がマーケットの中心にある出来たばかりの商業施設だ。腹ごしらえをし、一角にあるライブハウスに到着するとリハを終えたメンバー達がライブ前に一服していた。そしてKinはSrirajaのメンバーでダブ担当のMarkと友達だったので挨拶を交わすと僕を彼に紹介してくれた。僕も日本で光風さんや内田直之さんと仕事させてもらっていますと伝えると彼らは嬉しそうに「そうなの?ようこそ!」と迎えてくれた。
その後始まったライブは終始穏やかな感じでとてもいい雰囲気だった。途中、タイで活躍している日本人ディージェイ、U-Key Manがラバダブセッションをしたり、お客さんの中の3、4歳くらいの子供がSrirajaの歌を一緒に歌っていたりして会場は盛り上がっていた。そして驚いたのがボーカルのウィンがライブでケーンを吹き出したのだ。モーラム等で使われるイサーン(タイの東北地方)を代表する民族楽器を見事に自分たちのレゲエに取り入れていた。この日のライブを見てさらにこのバンドが好きになった。
その日の模様は後日youtubeにアップされていた。



 
 
 

 

ライブ終了後、メンバーはサインに握手に大忙しで人気の高さを知った。ボーカルのウィンは友達とやっているオーガニックコットンを使った帽子やTシャツも会場で販売していた。そして日本ではあまり手に入らない彼らのアナログLP盤(CDは日本で彼らと交流のある光風さんのHPで買えます!)も売っていた。値段はおよそ1400バーツくらいだったと記憶している。それは日本円でおよそ4千円。レコードブームの日本でさえプレス代を考えるとなかなか切るのに勇気のいるアナログ盤を彼らはタイで切っていたのだ。僕は迷わず買った。するとメンバーはみんなでサインをくれた。内田さんや光風さんにも見せるよ、と言って一緒に写真も撮った。
そして何より来ていたお客さんや会場から今のバンコクの若者の遊び方や楽しみ方を感じる事ができた。バンコクは大都会だが日本の都市部にはない穏やかさが感じられた。うまくは言えないがそれは確かに場所の広さや物価の安さとかではない何かだ。そんな事を考えながら帰り、いつもより少し離れた場所でのんびりしたバンコクの1日は終わった。古いモーラムやルークトゥン以外にももちろん良質なヒップホップやレゲエもタイにはあると確信した。もっと新しい世代のタイ音楽を掘ってみたい気持ちも強くなり、次の日からさらにyoutubeやフェイスブックを見まくってタイの最新音楽情報を漁った。するとある日youtubeで見つけたラッパーの存在が気になった。彼の名前はJUU。Bass downというなんとも不穏でDopeな曲とラップ、ビデオにやられ、他の曲を漁るとラムウォンをネタに使った曲やモーラム等で使われるピンという楽器をイサーンのような田舎で弾いている映像も見つけ興奮した。

 
 

もしや、イサーンのラッパーなのか!?
彼のタイ語の情報をyoutubeのリンクから飛べる彼のフェイスブックページで追いかけた。
すると、なんと来月SrirajaとJJグリーンマーケットのオープンエアレストランでライブをするという情報を得る事が出来た。やはりこの空気感、Srirajahも認める只者ではないラスタの先輩なのか思った。こんなにヤバイラッパーがいるのかと、そのライブをワンメコンの編集の為バンコクに居残っていたMMMと見に行こうと決めた。そしてそれはついに口を開けた巨大なタイヒップホップシーンへの入り口でもあった……。


続く



【告知】
5月30日(水)One Mekong meeting @Shibuya Loft
Young-G、MMM、相澤虎之助、soi48が、インターネットの世界ではわからないアジアのヒップホップの現場、ゴシップ、カルチャーを一挙紹介。




【告知】
6月2日(土) stillichimiya復活祭 KAMIKANE 3000
本文中に登場するタイのラッパーJUUが来日します!







Young-G
山梨県一宮町で生まれたムーブメント”stillichimiya”メンバー。DJ,プロデューサー,サウンドエンジニア‥音に関わる様々な活動を展開。ソロ活動としてDJやビートを提供する傍ら、田我流とカイザーソゼ、おみゆきCHANNEL、IS PAAR BAND等のプロジェクトにも参加。2011年フィリピン、マニラのトンド地区でのHIPHOPワークショップを経てから”アジアで独自の進化を遂げるHIP HOP”をテーマにしたMIX CD「Pan Asia」シリーズ(Vol1,2)を製作。日本で流通しないアジア圏のHIPHOPアーティストの招聘や普及活動を展開。2017年に公開され、タイ~ラオスで撮影された空族の新作映画『バンコクナイツ』に楽曲を提供、録音スタッフとしても参加。同映画は毎日新聞映画コンクールの監督賞、音楽賞と言う名誉ある賞に輝いた。タイを中心にラオス、カンボジア、ミャンマー等、メコンの音楽に魅せられおよそ一年にわたり現地で音楽を収集、研究。独自の視点と経験から放たれる音は、リスナーを日常と洗脳から解き、桃源響へと導く。

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