「Fais le toi-même si t'es pas content=満足できないなら自分でやっちゃえ」。製作、批評、翻訳と様々な方法で映画と関わっている松井宏さんが「カイエ・ デュ・シネマ」の記事などを起点に、映画を作る/見せる/観ることについて探っていきます。今回の話題は、先日東京藝術大学で行われた映画編集者ヤン・デデさんの特別講義について。フィリップ・ガレル監督の『愛の残像』を映写しながら各場面の編集について具体的に聞いていくという方法でその講義を行った理由とは――

映画のいろんな具体
文=松井宏
映画にまつわる職業というものにはたくさんの種類があって、それぞれにそれぞれ特有のおもしろさや刺激があるのだと思う。先日、フランスの映画編集者のヤン・デデさんを呼んで上映イベントを東京藝大でやった。フィリップ・ガレルの『愛の残像』(08)を素材にして、トークではデデさんに根掘り葉掘りいろいろと質問をして、お話をしてもらった。なぜこのタイミングでカットしたのか、なぜこのショットとあのショットが繋がるのか、なぜこのワンシーン・ワンショットには途中で別のショットを挟み、なぜあのワンシーン・ワンショットはそのままフルでいったのか、いったい編集室においてデデさんの頭のなかで、そして彼の手の動きのなかで、なにが起きていたのか、彼の言う「現代的な編集」(「古典的な編集」との対比における「現代的な編集」)とはなにか……。などなど、事前にデデさんにも許可を取って、『愛の残像』の抜粋を見せながらこまごまと具体的な質問を投げかけていった。彼もそのやり方に喜んでくれたのでよかったし、なによりも個人的に、ものすごく得るものがあった。はたして参加してくれたお客さんにとってどうだったかは、さて、どうだったのだろう……。
ヤン・デデさんは東京藝大の学内編集領域の学生対象のワークショップの特別講師として招聘されていて、それで今回、このようなイベントを組むことができた。デデさんとは10年以上前のパリの留学時代にいちどお会いして、お話させてもらったことがあった。彼女のアシスタントをよく務めていた(務めている)秋元美野理という友人の女性がいて、彼女に頼んで、会わせてもらったのだ。お昼までご馳走になってしまった。その後、当時ぼくが関わっていた「NOBODY」という映画雑誌でデデさんの長いインタヴューも掲載することができた。それは秋元が聞き手を務めてくれたのもあり、とてつもなくおもしろい記事になった。気になる方はぜひ「NOBODY」30号と31号をご覧になってみてください。
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