boidマガジン

2017年09月号 vol.4+10~12月号

大音海の岸辺 第44回 (湯浅学)

2017年12月11日 12:18 by boid

大著作集『大音海』の編纂を兼ね、湯浅学さんの過去の原稿に書き下ろしの解説を加えて掲載していく「大音海の岸辺」第44回です。前回は「ミュージック・マガジン」の年間ベストアルバム企画の記事などを掲載しましたが、今回は「レコード・コレクターズ」誌のリイシュー・アルバムを対象とした年間ベスト企画の記事を、1987年~2006年までの30年分ごっそり再録。さらに「THE DIG」に掲載された2007年のサイケデリック・ベスト10の記事も添えました。80年代末から再生メディアの中心がアナログ盤からCDへ移行していく中で、CD化による旧譜の復刻が進められた状況を振り返った書き下ろし解説とともに、ゆっくりお楽しみください。
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『ジス・イズ・ミスター・トニー谷』



文=湯浅学


「レコード・コレクターズ」の年間リイシュー・アルバム・ベスト10/5


1987年 日本のポップス、歌謡曲ほか

①『ジス・イズ・ミスター・トニー谷』
②『東京音頭・天竜下れば/中山晋平の新民謡』
③『素晴らしきGSの世界Vol.1』
④『NIAGARA BLACK BOOK』
⑤『キャニオン・アイドル神話』

 お茶にごし的企画ものではなく、愛情以外のなにものでもない優れたコンピレーションが年々増えている。うれしく、よい傾向だ。特に邦楽5社共同企画による『ゴールデン60’sコレクション』全17アイテムは豪華にして堅実な内容の空前絶後と呼ぶべき宝物である。音楽である以上、ディスコグラフィー上に印されているだけでは無意味である、と。しかも我が国芸術史上に何らかの形で大きな影響を与えた60年代のカヴァー・ポップスからGSまでだ。これまで、なぜか聴かせようとする人が少なく、マニアの手なぐさみかレコード会社の塵であることを強いられてきた物腰アクティヴな輝きたちの群がやっと一般市場へと解き放たれた。この企画の中からどれか1枚を選ぶというのは酷というもの。よってベスト5からははずしてある。まず、とにかくどれでもいいから聴いてくれってこと。
 やな奴がやな奴であるために生じた爽快感がほとばしっている①は永遠の異端。よくぞこうして再び世に出てくれたと心の中で手を合わせた。平野甲賀氏の手になるジャケットもいい。プロデュースがかの大瀧詠一ならさもありなんと思うが、現状の力不足をあばきたてて止まない“一枚”に仕上がったことで第一位とあいなり申した。
 その大瀧の70年代後半の仕事の奇想天外創意工夫ぶりがぎっしりつまった4枚組が④だ。もちろん大瀧のこと、過去をそのままCD化したわけではない。さらに熱と技術が加えられ、生まれかわっているのだ。中でも特に聴いてもらいたいのは、やはり音頭を集成した1枚。日本人意識の相対化が軽々となされている。②はその大瀧の音頭ものの源流に位置する。古典の異形化ではなく、もっと大雑把な日本人のヘソの緒。同時に出た童謡集と流行歌集もよくまとめられている。
 GS研究の第一人者の黒沢進が愛をそそぎ込んだ2枚シリーズのコンピレーションが③で、これは東芝関連のGSのABCだVol.2に比べるとVol.1のほうがB、C級の置き方そのものにパワーを感じられて、この熱きGS魂には胸を打たれながら、ときどきしっかりと笑わせてもらった。
 ありそうでなさそうなのは⑤だ。キャニオンというアイドルの老舗だからこそだろう。前述の『ゴールデン60’s』を企画した中心人物=高譲氏とあいどる倶楽部の松井俊夫氏の手になる70~80年代の華とあだ花36曲。ジャケットの複写付きで解説も親切でよい。
 そのほかニューミュージックの源流レーベルであったURC、ベルウッドの復刻(前者はSMS、後者はキング)というのもあった。それにしても、演歌にこうした資料的価値のあるコンピレーションがないのは何故だろう。88年はもっと歌謡曲なやつがほしい。

(1988年2月号)



1988年 日本のロック、ポップス、歌謡曲

① はちみつぱい『セカンド・アルバム~イン・コンサート』
② 榎本健一『甦るエノケン~榎本健一大全集』
③ 美空ひばり『ひばり ジャズを歌う~ナット・キング・コールをしのんで』
④ 四人囃子『一触即発+「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」』
⑤ 近田春夫とビブラトーンズ『ビブラトーンズ・ファン』
⑥ 外道『外道』
⑦ ルージュ『The Strikes Back』
⑧ ザ・ピーナッツ、伊東ゆかり、じゅん&ネネ、ピンキーとキラーズほか『ヒット辞典・HIT INDEX Vol.1 ガールポップ編』
⑨ フランキー堺、榎本健一、ザ・ピーナッツ、雪村いづみ、弘田三枝子ほか『オリジナル版~懐かしのTV・CM大全集1954~1973』
⑩ エイプリル・フール『The Apryl Fool』

 70年代前半のロック・シーンの見なおし、これが本格化してきた、というのが88年の特に目立った傾向だった。
 87年のURC、ベルウッドにつづいて、ショー・ボート、ニュー・モーニング、バーボンといった確かな意志を感じさせたレーベルに残された、骨のある作品群の復刻が始まった。89年にはさらに、ポリドール、ビクターのアクの強い奴らが陽の目を見る予定だという、とても楽しみである。
 それにくらべて歌謡曲のほうが一息ついた感じで、残念である。まだまだこんな状態では困る。戦前はもちろんだが、昭和30年代の歌謡シーンもかなりお座なりのままである。実はこのベスト10の上位入賞が確実視されていた待望の服部良一作品集『僕の音楽人生』は、2度の発売延期でやむなく来年まわし。残念。
 いわゆるヴィンテージ盤の価格高騰のせいもあるが、見切り発車のブートレグまがいのもちらほらする。レコード会社のほうがリスナーの欲望の後手にまわっている以上、ある程度はしょうがないのかもしれないが。
 はちみつぱいのライヴという離れ業をやってのけたSFC音楽出版とその首領、高護氏の動きには89年度はさらに要注意。それから、もういいかげんに『東京ワッショイ』と『ホソノ・ハウス』はCD化しなくちゃね。

(1989年2月号)



1989年 日本のロック、ポップス、歌謡曲

① 中野忠晴、霧島昇、渋谷のり子、李香蘭、笠置シズ子ほか『服部良一/僕の音楽人生』
② 笠置シズ子『ブギの女王』
③ ジャックス『CD BOX』
④ 遠藤賢司『黎明期ライヴ』
⑤ ザ・ダイナマイツ『ザ・ダイナマイツ』
⑥ 布谷文夫『悲しき夏バテ/布谷文夫Ⅰ』
⑦ 雪村いづみ『雪村いづみスーパー・ジェネレイション』
⑧ ゴールデン・カップス『スーパー・ライヴ・セッション』
⑨ 古関裕而『古関裕而全集』
⑩ はっぴいえんど、高石友也&ジャックス、はちみつぱい、休みの国ほか『J-Rock Early Days Strong Selection』

 いわずもがなの大復刻の嵐。徳間ジャパン、キングのシリーズが入ってねえぞ、という声を背に正直申し上げて今年復刻されたものは全部入れたいほどなのだ。88年来の60年代末~70年代全般の日本のロック・シーンの再評価は、むしろ遅すぎたくらいだ。個人的なことをいえば、かねてから愛情をそそいできながらなんとなく世間から見すごされてきたものが、今年ほどに大量に再び陽の目を見ようとは、夢にも思わなかっただけに涙はちょちょ切れまくったのである。
 服部先生関連の①②は88年分のずれ込み。これに⑦を加えて子々孫々へ伝えたい。⑤は全音源収録という点が凄い。遠賢は『東京ワッショイ』はじめ他の6作ももちろんなのだが、④は、その後20年分の遠賢が結晶化しているといいたいほどピュアな名品だ。布谷文夫はDEW時代のライヴ盤も必聴。⑧は陳信輝のソロ、フード・ブレイン、パワー・ハウスなどを併聴のこと。GS関係は他にもビクターからのモップスとオックスが充実していたが、フィリップスのシリーズは編成にやや不満あり。貴重音源大行進の⑩に、来年もURCはやってくれるに違いないと期待は募る。歌謡曲関連では、コロムビアの『昭和~年生まれの歌』シリーズ全36枚があるが選曲がケチ臭い。⑨は好企画の労作だがオリジナル・モノラル音源ならなおよかった。

(1990年2月号)



1990年 日本のロック、ポップス、歌謡曲

① ザ・タイガース『The Tigers Perfect CD Box』
② 頭脳警察『頭脳警察LIVE!』
③ 高田渡『セカンド・アルバム~系図』
④ 久保田真琴と夕焼け楽団『ライヴ・サンセット64’40”』
⑤ 4・9・1(フォー・ナイン・エース)『HIT A GO GO』
⑥ 木の実ナナ、鹿内タカシ、マーガレット、楠トシエほか『GS&POPSゴールデン・コレクション』
⑦ 山口淑子(李香蘭)『夜来香』
⑧ 遠藤賢司『HARD FOLK KENJI』
⑨ 小坂忠『もっともっと』
⑩ いしだあゆみ&ティン・パン・アレイ・ファミリー『歴史的名盤』

 コロムビアの『昭和の流行歌(上、下)』は別格とさせていただきました。
 美空ひばりさんも何種か出たが、いずれも選曲がケチ臭くて残念。中では『秘蔵! 幻の未発表曲集』が興味深いものだったが、こうして小出しせずに、13年前にやったような全貌を網羅しようという長大なシリーズ化が、何故成されないのか。日本人として悲しい。
 ここまでやってもられるタイガースって、ほんとうに幸福だな、と①には感慨もひとしお。音質を問題にするより、その意志を聴くべきなのが凄い発掘ものの②。④もそのスケールの大きさが心地よい発掘盤。数あるベルウッドの名作群の大代表としては③は、とにかく必携必聴。もしかして、GSの本質とはこのバンドではないかとさえ思える⑤は、その前の時代のものを含む珍コンピレーション⑥と併聴すると味わい深い。永遠の妖気と色香に酔える⑦は、他の二枚も。愛情あふれる解説も貴重です。ついに復刻の⑧は、バラエティの豊かさの中にゆらめくイラ立ちが熱い。しかしCBSソニーのCD選書シリーズのジャケットは、どうにかならぬものか。ほのぼのした中でバックの鋭いプレイが胸を打つのが⑨。⑩のクールな歌謡世界は今聴いてちょうどいいほどだが、このタイトルには、やっぱりちょっと問題ありますよ。

(1991年2月号)



1990年 ロック

① デレク&ザ・ドミノス『レイラ・セッションズ』
② ティム・バックリー『Dream Letter~Live In London 1968』
③ エレクトリック・ライト・オーケストラ『アフターグロウ』
④ ザ・ボンゾ・ドッグ・バンド『The Best Of The Bonzo Dog Band』
⑤ ダグ・サーム&ザ・サー・ダグラス・クインテット『The Best Of Doug Sahm & The Sir Douglas Quintet』
⑥ アストロノーツ『太陽の彼方に』
⑦ ミッチ・ライダー&ザ・デトロイト・ホイールズ『ベスト』
⑧ ピンク・フェアリーズ『Pink Fairies』
⑨ ポール・コゾフ『バック・ストリート・クロウラー』
⑩ ザ・キンクス『Muswell Hillbillies』

 いろいろ出たボックス物だが、量に見合った<新たな興味>という点で、①は圧倒的。レコーディングという行為そのものをドキュメントしてしまったのだから恐れ入る。箱物にする必然性とはこういうものにこそ見出せるのである。ツェッペリンの箱は、その存在において、最大限の敬意を払うべきものであるが、やはりもっと<新発見>の驚きがほしかった。贅沢な望みかしらん。
 幽玄の珠玉の発掘が②。独特の歌空間を見事にとらえた丁寧な仕事ぶりが心に残る。③はファン心をしっかり押さえた日本盤で。いずれは“ジェフ・リン・ボックス”を実現してほしい。さすがはライノ、と思わず膝を打ったのが④。選曲/ライナーともEMI盤を上まわる。やはりライノから出ているラットルズのベスト盤と御一緒に。ダグ・サームの豊潤で泥臭い世界が渋い選曲で楽しめる⑤、インスト・ロックの謎がスカッと解き明かされている⑥、どちらも永遠の魔力にあふれている。⑧と⑨は70年代初期の英国の混沌がおもむろに刻み込まれている名曲揃い。⑦は日本盤で登場という点を評価。RCA時代のキンクスも、ついにライノがやってくれた。⑩は、CD化で美しさを増したので。ワーナーからの70年代もの復刻は九一年もさらにディープにつづくらしい。しかし日本独自のコンピレーションに、もっと鋭いものがほしい。

デレク&ザ・ドミノス『レイラ・セッションズ』
(同上)



1991年 日本のロック、歌謡曲

① 裸のラリーズ『'77 LIVE』
② 村八分『草臥れて』
③ 中尾みえ、雪村いづみ、田川譲二、平尾昌章、トニー谷ほか『黄金のニューリズム50s・60s~みゆき族も太陽族も朝まで踊り明かそう』
④ フォーク・クルセダーズ『ハレンチ』
⑤ 三木鶏郎、江利チエミ、榎本健一、トニー谷、楠トシエほか『トリロー娯楽版~三木鶏郎と仲間たち』
⑥ 三音家浅丸『悪名』
⑦ スピード、グルー&シンキ『スピード、グルー&シンキ』
⑧ 友部正人『72~74』
⑨ ライオンズ、ワイルド・ワンズ、ゴールデン・カップスほか『ザ・シングル盤GS編 VOL1』
⑩ ザ・ピーナッツ『ザ・ピーナッツ・ドリーム・ボックス』

 なにはなくとも、とにかく裸のラリーズである。ここには①だけを挙げるにとどめたが他の2作も含んでの1位である。これ以上の衝撃を求めるとするなら、それは、まだ聴いたことのないラリーズの録音以外にはないだろう。次はまだか?
 スタジオ録音による村八分の②。永遠に色褪せることのない頑丈な音の塊だ。こういうコンピレーションがあと10本ぐらいはほしいもんだ、と思うのが③。歌謡曲の黄金時代=昭和30年代は異種交配/雑多な創意交換のブラック・ホールだ、ということをさらに示しつづけねばならない。フォーク/ロックの自主制作の先駆として、実物を見た人がほとんどいなかった、まさに幻の名盤が④。フォークルは東芝からの復刻も必聴。⑤を聴くと、やはり『三木鶏郎集大成』を増補して復刻してほしくなる。浅丸は⑥だけでなく、他ももちろん重要。⑦は『前夜』も併せてどうぞ。とても温かく愛情によって生まれた⑧は、自主制作の鑑。GSは本気でやらなければ、と思うのが⑨。類い稀なハーモニーを10枚組で存分に味わえる⑩は、双子好きの俺にはまさに至宝。伊藤姉妹の芸域の広さもさることながら、宮川泰の才能も並ではない。クレイジー・キャッツは全部まとめて、メイド・イン・ジャパンのシリーズもなかなかそそるものであった。深謝。

(1992年2月号)



1991年 ロック

① フランク・ザッパ『Beat The Boots!』
② ボブ・ディラン『ブートレッグ・シリーズ VOL.Ⅰ~Ⅲ』
③ ヘンリー・カウ『The Virgin Years』
④ ロイ・オービンソン『伝説』
⑤ スティーヴ・ジョーダン&ジョーダン・ブラザーズ『ラ・バンバ』(LP)
⑥ ザ・バーズ『フライト65~90』
⑦ ザ・ハニカムズ『The Honeycombs In Tokyo』
⑧ ザ・ファイア・エスケイプ、ザ・リリクス、ジ・アザー・ハーフほか『サイコティック・リアクション・プラス・10』
⑨ ファウスト『The Faust Tapes』
⑩ MC5『キック・アウト・ザ・ジャムズ』

 惜しくも選にもれたのは、CS&Nのボックス(4枚目がちょっと…)、ピーター・ローワン、ジョー・ミークのストーリーもの、トゥモロウ、『フィルモア最後の日』、トラッシュメンの未発表録音など多数。待望のCD化なったニルソンの『Pussy Cats』だが、ジャケットが最悪のイラストに変わっていてカックン。悔いが残るのはライノからのモンキーズのボックスを手に入れられなかったこと(91年12月17日現在)。スペクターのボックスは選曲に不満ややありなのと、出たのはうれしいがどうもまだ気分がスッキリしないのとで選外。
 ⓵はアナログのセットで。ブートに対する姿勢そのものが快挙。②は選曲が雑然としているようで、実に心に染みるように出来ている。付録のファミリー・ツリーだけでも価値ある③は、創意の深さをたっぷりと味わえる。とにかくこれを俺は待っていたんだ、の④。アドレナリン濃度高まる⑤のドライな豪放さ。細部への気づかいに頭が下がるボックスものの好見本⑥。まさかにこんなんが出るとは、驚きのレア・アイテム⑦。おまけが10曲という大盤振舞いに拍手の⑧。1日中ひたりきっていたい混沌の⑨は、国内で発売されたファーストとセカンドよりインパクトあり。なんといっても基本の中の基本の⑩。別格はチャック・ベリーのチェスの9枚組ボックスだ。

(同上)



1992年 日本のロック、歌謡曲

① 裸のラリーズ『Les Rallizes Dénudés』(VHS)
② ザ・プレイボーイ、ザ・レンジャーズ、ザ・ジェノバほか『カルトGSコレクション〔クラウン編〕VOL2』
③ 應蘭芳、山田銀次郎、奥田清ほか『幻の名盤解放歌集*ビクター編/渚の歓喜(エクスタシー)』
④ かまやつひろし『かまやつひろしの世界』
⑤ ロスト・アラーフ『ロスト・アラーフ』
⑥ 久保田真琴と夕焼け楽団『Second Line』
⑦ パンタ『Pantax’s World』
⑧ ミッキー・カーチス&サムライ『侍』
⑨ 友川かずき『やっと一枚目』
⑩ フライド・エッグ『Dr.シーゲルのフライド・エッグ・マシーン』

 裸のラリーズである。動く裸のラリーズが140分。それでも足りないくらいだ。めまいの連続。次はまたCDをお願いします。『カルトGSコレクション』はどれも素晴らしく、海外のガレージ・ファンも大よろこびだろう。特に〔クラウン編〕と〔テイチク編〕の実験心は、すさまじいものがある。すさまじいと言えば、手前味噌だが、『幻の名盤解放歌集』である。これからさらにディープになる。自信を持っておすすめします。かまやつひろしのファースト・アルバムは、手焼きせんべいの味のロック。ロスト・アラーフは出ただけでも価値がある。夕焼け楽団のは、まさに待望。ニューオリンズのエッセンスがぎっしりつまりまくっている楽しい一枚。
 パンタのやつは、もちろん他のものも含めての選出。これを放っておくやつは信用できない。ミッキー・カーチス&サムライは今だからこそ見えてくるものをたくさん持っている、カラフルな作品。間口の広さと消化力のよさがなによりの魅力。
 友川かずきは、この『やっと一枚目』が個人的には一番好きだ。ひりひりした傑作。フライド・エッグもパワフルで楽しい。『西条八十全集』と『服部良一全集』は別格とさせていただきました。歌謡曲のコンピレーションは気楽に楽しもうぜ風のものが目立ったが、もっとマニアックにやるべきだと思う。

(1993年2月号)



1992年 ロック

① キング・クリムゾン『ザ・グレート・ディシーヴァー LIVE 1973-1974』
② ジミ・ヘンドリックス『ステージ』
③ ミシシッピ・ジョン・ハート、フランク・ハッチスン、ロニー・ジョンスンほか『The Retrospective(1925-1950)』
④ キャプテン・ビーフハート『I May Be Hungry But I Sure Ain’t Weird』
⑤ トゥインク『Think Pink』
⑥ フランク・ザッパ『プレイグラウンド・サイコティクス』
⑦ ザ・ボンゾ・ドッグ・バンド『Cornology』
⑧ ルー・リード『思考と象徴のはざまで~ルー・リード・アンソロジー』
⑨ ビッグ・スター『ライヴ』
⑩ ニルソン『パンディモニアム・シャドウ・ショウ』

 質と量ということを考えても、上位3作は文句なしである。
 箱ものは、まず手に取ったときの印象が大切だと思う。パッケージも大事だよね、やっぱり。その点キング・クリムゾンのやつは内容とピッタリ一致しているし、〝永遠の謎〟みたいな空気を醸し出している。ジミ・ヘンドリックスのはステージを丸ごと入れているので、MCのおもしろさがよくわかるのが興味深いところ。プレイはもちろんグレイトだ。③はロックの基本がよくわかり、想像力を使ってあれこれ考えていると時の経つのも忘れてしまう作品。こういうものがあと5つぐらいほしい。
 ④はレギュラー盤並みの聴き応えあり。音もいい。アナログはメチャ高な⑤の復刻に、買うとき店頭で思わず「やったじゃん」と言ってしまった(ひとり言です)。ザッパは92年もあれこれ出て、みんなよかったんだが、フィルモアでのジョン&ヨーコとの共演の長尺版入りなのがうれしくて⑥を。
 ⑦、⑧は解説が見事。特に⑦は、ならではのもの。ルー・リードはついにやった『メタル・マシーン・ミュージック』を合わせて楽しんでいます。⑨はワイルドだが、ほのかにポップなところが魅力。ニルソンに駄作なし。次点はスティーヴ・ジョーダンの『涙のファンキー・テックス・メックス』です。

(同上)



1993年 日本のロック/歌謡曲

① マジカル・パワー・マコ『Hapmoniym 1972-1975』
② ガセネタ『Sooner Or Later』
③ 『幻の名盤解放 藤本卓也作品集*キング編~君が欲しい』
④ 内田裕也、尾藤イサオ『レッツ・ゴー・モンキー』
⑤ 和田弘とマヒナスターズ『魅惑のコーラス』
⑥ あきれたぼういず『ぼういず伝説』
⑦ 天井桟敷『呪術音楽劇 邪宗門』
⑧ 友川かずき『千羽鶴を口に咬えた日々<そっと三枚目>』
⑨ 三上寛『負ける時もあるだろう』
⑩ 『トリローと愉快な仲間たち』

 ①は我が目を疑わせることでも第1位。そもそも未発表テープをCD15枚にして出してしまおうという、その志が素晴らしい。だいたい72~75年にそれだけの量の作品を録音しておいたこと自体が尊敬に値するのだ。ついに出た②は音の出る凶器。③は凶器という名の歌謡曲。俺は嘘っぽいものは大嫌いだ。③は“幻の名盤解放歌集”の目標のひとつだった超重要作である。藤本卓也は広さや楽しさではなく深さや強さや苦しさで歌謡曲の真理を探求し、表現しているのである。俺は嘘っぽいものは大嫌いだ。④は待望の一作。同時発表の『ロック、サーフィン、ホット・ロッド』とあわせてどうぞ。東芝時代の寺内タケシ師ものも同様に見事だ。⑤は昭和30年代の日本歌謡史上の重要グループが、何故重要かをじっくり考察できる箱。洋楽=ジャズ~ハワイアンと歌謡の関係はこの人たちが鍵を握って橋渡しをしていたのだ。⑥の爽快感、雑食性および疾走感とヴァイタリティはザッパに通ずる。J・A・シーザーは他の作品も復刻を。⑦はライヴならではの緊迫感がサイケな空気と練りこくられている快盤。友川かずきはどれも痛く激しい。⑧は友川入門用にも。三上寛の歌の度量は計り知れない。⑨は聴くほどによくなる。⑩はさらなる続編を期待させるもの。次点は『クレージーキャッツトラックス』です。94年も我等は進撃す。

(1994年2月号)



1993年 ロック

① プラスティック・ピープル『The Plastic People Of The Universe』
② ファグス『The Fugs First Album』
③ フランク・ザッパ『アヘッド・オブ・ゼア・タイム』
④ レインコーツ『The Raincoats』
⑤ V.A.『Everything You Always Wanted To Know About '60s Mind Expansive Punkadelic Garage Rock Instrumentals But Were Afraid To Ask』
⑥ オールマン・ブラザーズ・バンド『ザ・フィルモア・コンサート』
⑦ モビー・グレイプ『Vintage』
⑧ SRC『SRC』
⑨ MIJ『Yodeling Astrologer』
⑩ シティ『夢語り』

 実は一番よく聴いていたのはアモン・デュールのファーストのCDだったのだが、これはどうやらブートらしい(との噂強し)。日ごと夜ごと全世界のサイケ/アシッド系のCD化はずいぶん進んでいる。
 まさかと思ったチェコの宝①はCD8枚にブックレットという素晴らしい箱。92年のリリースだが日本入荷は主に93年だったので。しかし思い切りのいいパワフルな人たちだ。
 ②はセカンドも当然合わせて。特におまけ収録のライヴが攻撃的でちょっとまぬけで興味深いのだ。④はガール・バンドのお手本。メイヨ・トンプソンの名作でもある。待望のCD化。ライナーもよい。サイケでガレージなインストばっかり集めた⑤もパワフルなバカもの。これを出したARF!ARF!レーベルは他のもよかった。⑥は新鮮なエディットに超驚き。未発表テイクやスタジオ模様もひょっこりわかる。⑦も二枚組で聴き応えあり。この人たちのムラッ気がよくわかる。オルガン系サイケの名作⑧。セカンドと未発表集もいい。ビッグ・ビートはがんばってる。それとKissing Spellというレーベルも要チェック。⑨はたくさん出たESPをちっとも代表しないアシッド・ヨーデル・フォークで、強引なエコーが快感。くつろぎの名作⑩のCD化なんて夢かいな。夢じゃないのが死。結局年末は③に限らずザッパを毎晩聴くことに。

フランク・ザッパ『アヘッド・オブ・ゼア・タイム』
(同上)



1994年 日本のロック/歌謡曲

① 矢吹健、佐久間浩二、梅宮辰夫ほか『幻の名盤解放 藤本卓也作品集*テイチク編~真赤な夜のブルース』
② 灰野敬二『わたしだけ?』
③ 安井かずみ『ZUZU』
④ 三木鶏郎『三木鶏郎集大成CD~トリロー・コレクション』
⑤ ザ・フローラル、スケルトンズほか『カルトGSコレクション~コロムビア編VOL.1』
⑥ ピーター『失われた神話』
⑦ 灰田勝彦『大・全・集』
⑧ エミー・ジャクソン『涙の太陽』
⑨ 越路吹雪『コーちゃんのお座敷うた』
⑩ 寺内タケシ&ブルージーンズ『トランペット・イン・ブルージン』

 シュガー・ベイブの『ソングス』はずっと愛聴してきたので、“リイシュー”というのがピンとこなくて。選外特賞です。次点はトミー藤山(日本のカントリー&ウエスタン、ブルーグラスももっとどうでしょう)、『エノケンのキネマソング』、南正人の『回帰線』など。東芝の黛ジュン、奥村チヨもナイスでした。どちらもシングルで集めたお姉さんたちですが、こういう“肉のある女”が今は歌の世界に少ないのは残念だ。特に若いやつに。このお姉さんたちのヴィデオは快挙でした。
 93年の『君が欲しい』以上に我々幻の名盤解放同盟が精力を傾けたのが①である。これは日本の核だ。人間の肝だ。音楽の恐ろしさを深さで表現する藤本卓也は、音楽獅子だ。①と共通する情と業と念を放つ②は、まさにブルーズだ。けだるい詩情がどんよりとしたキュートな色香を感じさせる③は虚無の美、なめらかなブキッチョさが胸を打つ。④は待望の箱。早技の凄さ、回転の心地よさ、すごい人でした。当然続編が期待される。⑤はVOL.1~3で一組。分裂ぎみの情熱よ永遠なれ。サイケは煩悩を解くか。⑥は詩がすばらしい名作。ピーターは美人だ。大ファンだ。至れりつくせりの箱⑦。和製インターナショナル・ロックの⑧。アレンジと演奏と音が芳酵な⑨はすごいジャズ。初期の寺さんはハードコア・エレキだ。大胆すぎるぜ⑩なんて。

(1995年2月号)



1994年 ロック

① ザ・ファグス『Live From The 60s』
② シン・ジュンヒョン&ヨプチョンドル『Shin Joong Hyun & Yup Juns Vol.1』
③ キャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド『Strictly Personal』
④ メイヨ・トンプソン『Corky’s Debt To His Father』
⑤ MC5『Power Trip』
⑥ フィフティ・フット・ホウズ『Cauldron』
⑦ ジュライ『July』
⑧ ボンゾ・ドッグ・バンド『ケインシャム』
⑨ マイティ・ベイビー、ジ・アクション『Original Mighty Baby Album Plus 5 Additional Tracks By The Action』
⑩ レミー『Born To Lose-Live To Win』

 選外にもサイケ/ガレージ系の名盤・珍盤あり。フォローがやたら大変である。
 94年もアモン・デュールはレアなセカンドがCD化されたが、これもブートレグか。キングのプログレ/ユーロロックは素晴らしいですね。ここには選出しませんでしたがアレアの5作は宝です。特別賞を捧げます。
 セカンド・ハンド、フィンチリー・ボーイズ、アート、ロザー・アンド・ザ・ハンド・ピープル(テレミンもの)、名盤ファイン・ジェードなども捨てがたい。ジェロニモ・ブラック、グランドマザーズ、フロ&エディなどMSIからのザッパ周辺ものもある。フレッド・ニールも。
 60年代ファグスのライヴのカオス、アイロニー、バカ力を強力に伝える①はエド・サンダースの筆も冴えている。エドと同時代人のジョン・シンクレア監修の⑤は25センチ盤も必聴。②は大韓サイケ・ファンクの大名盤。これなくして大韓ポップスを語る奴はバカ。ビーフハートの③は待望のものだが音質は向上していない。でも凄い。祝来日の④は前衛人の徒然草。⑥は明と暗の交差、よどんだ電子サイケ。英国サイケならではの跳躍が楽しい⑦。実は⑧にもテレミンが。分裂気質に改めてぐっときた。⑨は英国のシスコ・サウンド。怪人の20年をダイジェストできる⑩はウサ晴らすにゃ最高の爆走もの。

(同上)



1995年 日本のロック/歌謡曲

① あきれたぼういず、三波春夫ほか『再発見・ニッポンの音/芸〔五〕 歌になった浪曲』
② 大瀧詠一『大瀧詠一』
③ マジカル・パワー・マコ『スーパー・レコード』
④ 遠藤賢司『歓喜の歌~遠藤賢司リサイタル』
⑤ 友川かずき『海静か、魂は病み』
⑥ ザ・キュービッツ、泉アキほか『60’sキューティー・ポップ・コレクション』
⑦ 青江三奈『青江三奈全集』
⑧ 安田明とビート・フォークほか『幻の名盤解放歌集*コロムビア編 サヨナラは出発のことば』
⑨ 曽我直子、河原喜久恵、二村定一ほか『SP盤復刻による日本映画主題歌集一~戦前編 1923~32』
⑩ フラワーズ、ザ・ゴールデン・カップスほか『ロックン・ロール・ジャム’70』

 テイチクの『再発見・ニッポンの音/芸』シリーズから得たもの、考えるヒントは実に多かった。①だけでなく『アジアン・コネクション』や『シティ・ソングの昭和史』も濃かった。シリーズ全体での1位ということです。大滝さんの再CD化はライナーこみで、コテコテの勉強でした。『ナイアガラ・ムーン』『ソング・ブックⅡ』も併せての2位ということですが、実は同率1位です。ラジオ関東時代の「ゴー・ゴー・ナイアガラ」のエア・チェック・テープをまたしても聴き返した年だった。③、④はポリドールからのうれしい復刻。④でのキャラメル・ママの演奏は貴重。⑤は『秋田ライヴ!! 犬』と併せて。⑥もシリーズまとめて聴かねば話になりません。聴き込むほどにホレてしまう⑦。安田明とビート・フォークの復刻は十年来の念願かなってのもの。このくどさは稀有な天然ファンクだ。⑨もシリーズ全体で。構成がバラエティ豊かなうえ、森一也氏の解説が実にこれまた濃厚なのだ。東芝からドッとCD化されたカップスや、ワンズのアルバムは、実にありがたいものだった。中でも珍品は⑩。GSとニュー・ロックのスキ間とはこれだ。クレージーの『レアディスク』もありがたかったし、なによりテイチクの『日本の伝統芸能シリーズ』での京山幸枝若8作CD化はうれしかった。さらなる浪曲復刻を切望いたします。

(1996年2月号)



1995年 サイケデリック/ガレージ・ロック

① アモン・デュール『サイケデリック・アンダーグラウンド』
② レッド・クレイオラ『Coconut Hotel』
③ ピーター・グルッツェン『The Unicorn』
④ エルキン・コレイ『Electric Türk』
⑤ キム・フォーリー『Outrageous/Good Clean Fun』

 参加し、裸になり何か音を出し気持ちよくなろうとすること。これがサイケの極意なり、とアモン・デュールは言うのだ。キャプテン・トリップありがとう。CD化の勢い激しく、ベスト5では、とてもつらい。サンデイズドからのものは全種買い。アーフ・アーフのコンピ三種も最高。レッド・クレイオラはまだまだ旧音源たんまりあるらしい。ピーター・グルッツェンはフォークのようなジャズのような快アシッドの名作だった。エルキン・コレイはトルコのサイケで69~71年ごろの気合いもの集。スウェーデンのエキゾチック・マインドは現役のサイケで謎の存在。キム・フォーリーはいわずもがな。ジョン・シンクレアによるトータル・エナジーからのMC5やレイショナルズ、アップも必聴。

(同上)



1996年 日本のロック/歌謡曲

① ザ・スパイダース、ザ・テンプターズ、アウト・キャストほか『グループ・サウンズ・オリジナル・コレクション』
② 東京ビートルズ『ザ・サウンド・オブ・1965』
③ ザ・ヘルプフル・ソウル『ソウルの追求』
④ Juke『19/1978-1982』
⑤ 寺内タケシとブルージーンズ『羅生門』
⑥ J.A.シーザー『国境巡礼歌~J.A.シーザー・リサイタル』
⑦ 灰野敬二『魂の純愛』
⑧ フィフィ・ザ・フリー、太田幸雄とハミングバーズほか『ソフトロック・ドライヴィン』
⑨ スリーファンキーズ『スリーファンキーズ・コレクション~永遠のジャパニーズ・グラフィティ』
⑩ だててんりゅう『1971』

 ジャンルの壁ゆえに外したが、特別賞大賞は大道楽からの『萬才から漫才へ~ルーツ編』である。疾風の話芸はファンキーでラッパーの鑑。コロムビアの『上方漫才黄金時代』(恐ろしいほどのハード・ボケ&ツッコミの渦)と『広沢虎造浪曲全集』も特別賞に。虎造の箱は当然続編を出していただかねばなりません。大滝詠一の『レッツ・オンド・アゲン』他3作は個人的感慨深すぎて選外とさせていただきました。次点はキング“黄金時代”シリーズの『コント55号』と『お笑い歌手』(繰り返しますが基本データ表記は忘れずに)、ヒカシューの『1978』、フリクションの『LIVE1980』など。サントラやテレビものも高品質で名盤続出でした。
 アウト・キャストは夢のようなLP復刻で、このシリーズは(監修黒沢進)、ボルテージやビーバーズもいいけどスパイダースの2枚が素晴らしい。大竹伸朗の19がCDで聴けるとは、まいりました。灰野敬二は空気の色そのものを変えるほどの箱もの。71年にこれをやっていただててんりゅうに驚愕。ヘルプフル・ソウルは未発表も見つかってよかった。スケールが地球大のJ.A.シーザーはもちろん『身毒丸』と併せて。スリーファンキーズと東京ビートルズは60年代中頃のパンク。寺さんは和製ロバート・フリップでもある。『正調寺内節』他も必聴。丁寧な仕事ぶりに頭が下がります。“ソフトロック・ドライヴィン”。解放歌集は97年もあれとアレなど、たんまりよ。

(1997年2月号)



1996年 サイケデリック/ガレージ・ロック

① ブルー・チアー『ライヴ・アット・サンホセ・シヴィック・センター 1968+モア』
② デヴィアンツ『セカンド・アルバム』
③ ザ(セント・トーマス)ペッパー・スメルター『Soul & Pepper』
④ ザ・マンドレイク・メモリアル『Puzzle』
⑤ ヤング・フラワーズ『Blomsterpistolen』

 マニアの迷宮はどんどん深まる。ドイツのヤフーは馬鹿丸出し全方位志向の編集盤を作り始めて最高。米国のディストーションはしっかりした仕事。ともに全部“買い”のレーベル。ニューヨークのパラレル・ワールドから出たカンボジアのGS集『Cambodian Rocks』にもまいったし、スモーガスボードのシリーズ『Diggin’ For Gold』はマヌケ美の暴走で泣ける。英テンス・プラネットからの諸作も必聴続出だ。しかし、我らのキャプテン・トリップの素晴らしさは、世界のサイケ人に放たれた虹だ。ブルー・チアーは2巻で1組だがVOL.2のほうが空気のシビレが高い。デヴィアンツもミック・ファレンコのコンビとともに。3位に代表される南米サイケの発掘はこの先楽しみ。マンドレイク・メモリアルも3作揃いで。北欧サイケのヤング・フラワーズだが、実はこれが一番ぐるぐるのザリザリ。次点はサンフランシスコのゴールド。

ブルー・チアー『ライヴ・アット・サンホセ・シヴィック・センター 1968+モア』
(同上)



1997年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① 《History~Kyohei Tsutsumi Ultimate Collection 1967-1997》(全2タイトル)
② ピンクレディー、沢田研二、北原ミレイほか『移りゆく時代 唇に詩~阿久悠大全集』
③ 中島そのみ、伊東ゆかり、中尾ミエ、園まり ほか《アーリー60’s ポップ(カルト)ガール》(全13タイトル)
④ 『幻の名盤解放歌集*大映レコード勝新太郎編~歌いまくる勝新太郎』
⑤ 『カルトGSコレクション』『オルタナティヴ・フォークコレクション』ほか《アーリーシリーズ》(全4タイトル)
⑥ 天津羽衣、京山幸枝若、寿々木米若ほか《日本の伝統芸能~浪曲》(全20タイトル)⑦ 川畑文子『青空』
⑧ 小林旭『歌手デビュー40周年記念~オリジナルベスト55』
⑨ シリア・ポール『夢で逢えたら』
⑩ 突然段ボール『アイ・ラブ・ラブ』
  困った。もう、順位は便宜上つけたものなので、あまり意識しないでください。『阿久悠大全集』には少し自分が協力している、との理由で2位ということです。Pヴァインの③は男性版《ニッポンのロッカビリィ》シリーズももちろん含んでのことで、ミッキー・カーチスのライヴや清野太郎、ポリドールの『カッコイイ10人』なども当然必聴です。勝新さんの復刻は他の5作も貴重なのだが、何度も申し述べるが、コロムビア盤、テイチク盤とも原盤番号及び発表年月日のデータぐらい何故記載しないのか。理由があるならお教えいただきたい。勝新さんの至上の歌声に優劣はない。が、あえて俺が選曲・解説を担当させていただいたものを挙げさせていただく。ソニーの⑤はフォーリーブスや男性アイドルものもありがたかった。今後が非常に楽しみ。⑦⑧ともさすがは老舗と思わせる聴き応え。だがアキラさんはウエスタンものが不足しています。ぜひ写真満載で大全集(童謡も含む。もちろん箱入りで)を。テイチクの⑥は開始から3年目だが97年は幸枝若はじめ、桜川梅勇や松平国十郎まで聴けてシビレました。今後もお願いします。ところでコロムビアの幸枝若はなぜCD化されないのでしょう。『左甚五郎全集』ぐらいはぜひ。大滝さんの新曲ほどではないにしろ⑨も平常心では聴けませんでした。⑩は力入りました。傑作です。

(1998年2月号)



1998年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① 川上音二郎一座『甦るオッペケペー~1990年 パリ万博の川上一座』
② 藤山一郎、ディック・ミネ、美空ひばり、島倉千代子ほか『古賀政男大全集~二十世紀の遺産』
③ 遠藤賢司、早川義夫、加藤和彦、久保田麻琴ほか『アシッド・フォーク・ヴィジョン』
④ 照屋林助『照屋林助作品集』
⑤ タージ・マハル旅行団『August 1974』
⑥ 京山幸枝若『蔵出し浪曲傑作集』
⑦ ザ・カーナビーツ、田代みどり ほか『漣健児のワンダーランド~好きさ好きさ好きさ』
⑧ ピーター『アーリーシリーズⅡ~ベスト・オブ・ピーター』
⑨ ジャスティン・ヒースクリフ『ジャスティン・ヒースクリフ』
⑩ シンガーズ・スリー『フォリオ―ル#2』

 音源としてこれほど感動を覚えた発掘は極めてめずらしい。空中をさまよっていた声が久方ぶりに寝床を得たようなものだろうか。①の各演者の礼儀正しさに何故か目頭が熱くなってしまった。今後の復刻、発掘に期待はつのります。芸能と歌謡とを何故きっちり区別して聴かなければならないのか、特に1930年代以前の作品に関しては大いに疑問であります。音響作品としての楽しみもまた格別なものがこの時代にはあると思うからです。
 98年度は“オッペケペー”が特別であったのと、前年の筒美、阿久の各全集ほどカジュアルではないが、どうせやるならここまでやってこそ“全集”と誰をも納得させる②の存在が素晴らしい。これに類するものには、97年作だが吉田正先生のものがある。緻密な仕事ぶりで古賀全集となった。こうした大物は制作に手間と時間がかかる。しかし過ぎ去った時間のことを考えれば、そしてそこに敬意を払うなら、手間はかけてこそ、だと俺も反省の毎日だ。
 ロック、フォークに関しては自分も復刻作業に関わっているので、いつもたいへん選びにくいが、98年はそれはまた念の入った(人によってはやりすぎとの声も)状態になっているのと、再CD化、あるいは過去のCD化が中途半端だったためのオリジナルに沿った作り直しなども多かったゆえ、いつにも増して選ぶのに手間どった。しかも音質的に以前のCDより明らかに向上しているものが多いので、チェックのために聴き始めると、もういけません。聴き入ってしまうことしばしば。URCの復刻では紙ジャケットで帯まで当時のままという特別編があったが、発掘によいものが多かった。最後まで迷ったのが『1968京都フォーク・キャンプ』だった。これを聴くと30年前の胸騒ぎが蘇ってしまうのだ。③は長年聴きたくてたまらなかった早川義夫と五つの赤い風船の共演テイクとおそるべき「時々それは」の収録によって凄いものになった。サイケデリックとかアシッドというキーワードで日本のロックを(時期を限定して)編集しなおす、という試みは見事に成功している。こうした新たな容れ物を作らないと漏れてしまう名演は多いだろう。続編が待たれる。アンソロジーといえば④はついに出版された『てるりん自伝』(みすず書房刊)の副聴盤としておすすめである。54年録音の「年中行事口説」から林賢編曲で田場盛信が歌う89年録音の「ククラキ節」まで、マルテルの代表的作品の胆が味わえる。14曲しか入ってないのが惜しいが、食いすぎは身体に毒だろう。特に古い録音に聴けるエレキの調べには酩酊感がありすぎで、これもアシッド・ヴィジョンのひとつか。実はこの④と⑤を続けて聴いたりミックスしたりすると、耳から極楽に行けてしまうのだった。タージ・マハル旅行団唯一のスタジオ録音⑤に学ぶところはたいへん多い。ロックとして聴いたって大丈夫なのは、年月を経たからではない。音の強度の問題だ。幸枝若師匠は逆にハイパーになれる大芸能。歌うように語り語るように歌う。言葉とビートの関係は、切れ味としゃれっ気と印象度の強さが肝腎と教示していることでは幸枝若師匠と漣健児は通じている。どれも基本のうちだが、個人的な興味と愛着度の強さでテイチク篇の⑦を選んだ。⑧は自分で解説を書いたものだが、改めてまとまるとピーターの低音が乗り越えた壁はずいぶん多かったことがわかる。キワモノにあらず。歌謡曲のアメーバー的訴求力の具現なのだ。ニュー・ロック関係のものは充実しすぎていて何作かを選出するのがむずかしいのと、自分との関わりが多すぎるのとで、実にリストに入れにくい。そうした中で⑨はやっと聴けた、という思いがとりわけ強かったもの。スタジオ作業に没入して作り出された世界だが、ただごとではない。しかし当時はほとんどだれもこれについて語らなかった。ニュー・ロック関係では、各社から数種出たシングルやライヴのコンピレーションがそれぞれおもしろかった。単にめずらしいだけでなく、シングルならではの捨て身技が効いているものが少なくなく、スリリングなのだ。当時買い逃したもの(今では超レア)が聴けるのは、シングルの場合特にうれしいものだ。めまいがしたのは⑩だ。スキャットによるジャズ交響楽やらクールにキメたのやらで人の声のおそろしさが堪能できた。
 その他もれてしまったものでは渡辺プロ系のコンピレーション『60’Sビート・ガールwith GS』と小山ルミ『ヒット・コレクション』、バーンズ、金延幸子のライヴを中心とした『時にまかせて』、四人囃子『二十歳の原点』(特にボーナス・トラックが凄い)など。99年には小杉武久『キャッチ・ウェーブ』を。

(1999年2月号)



1998年 サイケデリック/ガレージ・ロック

① ヤホワ13ほか『ヤホワ・コレクション』
② ザ・スタンデルズほか『ナゲッツ4CDボックス』
③ ボビー・カレンダー『Rainbow』
④ レイジー・スモーク『コリドー・オブ・フェイセズ』
⑤ ザ・サーチ・パーティー『Montgomery Chapel』

 まさかと思うようなものはほんとうにうようよあるものだなとつくづく思った。ヤホワの箱が日本から出るとはアメリカ人もびっくりだろう。『ナゲッツ』が増補されるのは予測がついたが、音質が太くクッキリとざらつきありで向上していたのにびっくり。さすがライノ。未発表音源、あるいは極小数プレスだった音源などがゴソッと出たりして少々あわてているのだった。サーチ・パーティーなんてその典型。これがまたオルガンが妙なフォーク・ロックなのだ。音質といえばビート・ロケットでLP復刻されたソニックスの『Introducing The Songs』もすばらしい音だった。その他アーフ・アーフからのペンシルヴァニア・シーンのシリーズは解説がすごい。ギア・ファブのがんばりも見事。あとシルヴァ・アップルズの未発表も。

(同上)



1999年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① はっぴいえんど、大瀧詠一、鈴木茂、松田聖子ほか『風街図鑑/松本隆』
② 水原弘、坂本九、森山加代子、ザ・ピーナッツほか『中村八大作品集~上を向いて歩こう』
③ 東京キューバン・ボーイズ、生田恵子、宝とも子ほか《日本ラテン音楽の軌跡》(全6タイトル)
④ ルージュ『1976』
⑤ 藤圭子『女のブルース』
⑥ 里国隆『路傍の芸』
⑦ 野坂昭如『絶唱!野坂昭如~マリリン・モンロー・ノー・リターン』
⑧ 佐井好子『萬花鏡+密航』
⑨ 広沢虎造《祐天吉松》(全8タイトル)
⑩ レイジー『ベスト・コレクション1977-1981』

 99年も復刻や再発の監修をいくつかやったが、そうしたCDの市場生命の短さはやはり気になる。結局“売れない”CDは大手も小手も初回プレスのみということでは同じように“買うのがたいへん”なわけである。出す方同様、買う方も根性キメるしかないわけです。再CD化希望が束になることは必要であろう。松本隆の①は、多少形が変わっても常に買える状態にあってほしい。中村八大の②も同様である。最近の傾向として歌手別のいわゆる“全集”よりも作曲家や作詞家など、作家別アンソロジーへの移行がある。実はそのほうがマニアにとっては時代の流れを知るうえではありがたくもある。編曲家アンソロジーもおもしろそうだ。
 しかしそうした傾向の中にあって、あえてオリジナル・アルバム中心に復刻を続ける高護氏関連のもの(藤圭子もそうです)は今後も要注目でしょう(数も多いけれど)。
 この10選以外でも中山千夏のCDブックやソニーの“アーリーシリーズ”の『チャーム&セクシー コレクション』(続巻熱望)、『いずみたく作品集』、中山ラビ『私ってこんな』、あがた森魚『永遠の遠国』、『ステレオによるフランク永井のすべて』などが心に残った。それに『カリキュラマシーン』のヴィデオ化も。じゃがたらのライナーを執筆させていただいたことに深く感謝いたします。

(2000年2月号)



1999年 サイケデリック/ガレージ・ロック

① ザ・スポイルズ・オブ・ウォー『The Spoils Of War』
② グレイトフル・デッド『So Many Roads』
③ キム・フォーリー『Outlaw Superman』
④ シー『Wants A Piece Of You』
⑤ モンクス『Five Upstart Americans』

 大好きなアレキサンダー・スキップ・スペンスは、曲が増え音質も向上とはいえ、一応再CD化なので選外に。牛心隊長の箱はワク越えの超特賞です。アーフ!アーフ!のリッター連発をはじめとする英断にも唸らせられた。①はドイツのノーマル・レコーズからの復刻で69~70年録音の電子音付サイケの快作。ジェイムズ・クオモって変なやつのイリノイのグループ。モンクスは“Black Monk Time”以前の録音集でアホ力炸裂。シーのまぬけ美の迫力も特筆のもの。キム・フォーリーのアンソロジーは演劇ロックの習作やパンクなど雑食の魅力横溢。晩秋についに出たデッドのCD5枚組未発表テイクばっかりの箱には65~66年のガレージなデッドのスタジオ録音も。なんだこりゃあ、と買うかやめるか判断に困るやつがずいぶん出た。

ザ・スポイルズ・オブ・ウォー『The Spoils Of War』
(同上)



2000年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① 村八分『Live '72~三田祭』
② 細野晴臣、はっぴいえんど、ティン・パン・アレーほか『ホソノボックス 1969~2000/細野晴臣』
③ 辺見マリ、沖山秀子、浅丘雪路、内山高子ほか『魅惑のムード 秘宝館』
④ 南沙織『Cynthia Anthology』
⑤ ジャッキー吉川とブルー・コメッツ『ブルー・コメッツ・パスト・マスターズBOX 1965~1972』
⑥ ザ・スパイダースほか『カルトGSボックス~ガレージからソフト・ロックまで』
⑦ 金武良仁、伊差川世瑞、古堅盛保ほか《SP盤復刻による沖縄音楽の精髄》(全2タイトル)
⑧ アーネスト・カアイ、灰田勝彦、ハーブ・オオタほか《ハワイアン・イン・ジャパン》(全5タイトル)
⑨ ちあきなおみ『ねぇ あんた~ちあきなおみ・これくしょん』
⑩ 田端義夫『男の純情~田端義夫 古賀メロディーを唄う』

 泣く泣く順位を付けました。皆同位と考えて下さい。しかもこの10作に入れられなかったものも素晴らしいもの揃いでした。美輪明宏『白呪』、野坂昭如『鬱と躁』、ピコ『abc』、といったオリジナル盤のうれしい復刻はもちろんだし、荒木一郎の一気の復刻ではあの『絵本』まで美しくCDで蘇り、タイガースのボックスは驚きの録音発見で新装され、リイシューのツボを押さえたものが毎月ぞろぞろ登場した記念すべき1年であった。紙ジャケ仕様によるアナログの忠実な復刻もより精度が増した。リマスタリングによる音質の改善にも目を見張るものがあった。今後はSACD(スーパー・オーディオ・CD)による復刻にも期待したい。
 ウルトラ・ヴァイヴ社による、アナログ・シングル盤の復刻シリーズもありがたかった。7インチは不滅です。シリーズといえばPヴァインの《お・し・え・て・アイドル》や、まだ続いてる《オリジナル版 懐かしのCMソング大全》にも唸った。ローオン音源の京山幸枝若師匠の(あえてカセットによる)ボックス化はさらに続けて欲しいし、嘉手刈林昌の一連の復刻にもまいりました。こうなるとマルテル・レコードのボックスもぜひ、と思ってしまいます。あなどれないどころか、さらに期待募るのが“通販専門レーベル”ものです。新聞広告のチェックも怠れません。

(2001年2月号)



2001年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① 松平直樹とブルーロマン、和田弘とマヒナスターズほか『ムードコーラス・スペシャル~秘密のカクテル』
② 頭脳警察『頭脳警察1』
③ ナンシー梅木、ジミー荒木、ジョニー・ワトソン楽団ほか《ジャズ・イン・ジャパン》(全6タイトル)
④ 大滝詠一『ロング・バケイション(20th Anniversary Edition)』
⑤ 豊年斎梅坊主、常盤津林中、吾妻夫人音楽連中ほか『全集 日本吹込み事始~一九〇三年ガイズバーグ・レコーディングス』
⑥ ほぶらきん『ランニング・ホームラン』
⑦ ザ・スパイダース、フラワーズ・ザ・ワイルド・ワンズほか『Go Cinemania Reel 9~Mera…Mera Mera: Group Sound Of Cinema Trax.』
⑧ オクノ修『Beat Mints Slow Mints』
⑨ ミスター・カイト『ライヴ・イノセント』
⑩ ゴールデン・ハーフ、沢田富美子、フィーバーほか《フラワー・ポップス・シリーズ》(2001年発売分3タイトル)

 選外のものではキングの俳優さんのアルバムの復刻“スターライブラリーシリーズ”(岩下志麻『炎のごとく』は不気味で特におすすめです)、数ある寺内タケシの名調子ギター・アルバムの中でも屈指の名演揃いの『世界はテリーをまっている』と『正調寺内節』の2オン1、驚異の前衛音楽集団、第五列の発掘音源(76~80年作)集『社長が出せって言えば出すから』、いぬん堂からのラビッツ一連のCD化、村八分『ライヴ』と山口冨士夫『ひまつぶし』のマスタリングの妙にも唸りました。
 頭脳警察は73年のライヴ盤と込みで、オクノ修さんも『胸いっぱいの夜』も併せて、ということで。⑤はダイジェスト盤で十分という気もしますが。ビクターの復刻作業はラテン、ハワイアンと重ねて来てついにジャズに。丁寧で素晴らしいシリーズになっている。⑥は貴重すぎるライヴ録音も加えられてさらに深みに。黒沢進とサミー前田の執念の賜物⑦は映像編もぜひほしい。パレード・レーベルの渡辺プロ音源復刻は健康なお色気。ミスター・カイトはひそかに喜んでいる人に何人も出会った。これを機に80年近辺の復刻は2002年にどっといく、かも。ついにアレが出るとの噂も。久々のロンバケ漬けナイアガラ漬けで新発見(個人的な)いくつも、の年であった。2002年はまずアキラさんですね。

(2002年2月号)



2002年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① 四人囃子『From The Vaults』
② 小林旭《アキラ》(全4タイトル)
③ いしだあゆみ『いしだあゆみ・これくしょん』
④ 〇△□(まるさんかくしかく)『〇△□』
⑤ 外道《水金地火木土天回明~外道・秘蔵音源集》(全2タイトル)
⑥ 小杉武久『Catch Wave』
⑦ J・A・シーザー、三上寛『田園に死す~オリジナル・サウンドトラック』
⑧ シバ『コスモスによせる』
⑨ 榎本健一、古川緑波、岸井明、柳家金語楼、あきれたぼういず、渥美清ほか『ザッツ!浅草芸人~江戸前の粋』
⑩ 春日八郎、三橋美智也、若原一郎、江利チエミほか《SP原盤再録によるヒット・アルバム、花のスター・アルバム》(2002年発売分10タイトル)

 順位はひとつの目安にすぎません。みんな同位だとお考えください。ここに入らなかったものも素晴らしいもの多数でほんとうに困りました。雪村いづみさんの『フジヤマ・ママ~スーパー・アンソロジー1953~1962』、『村上律と中川イサト』、伊東きよ子『23時の女』、ミラーズ、M、プティ・マミ。鈴木慶一とムーンライダーズ『火の玉ボーイズ』のリマスター盤もよかったし、鈴木昭男さんの75年から01年にいたるアンソロジー『Odds And Ends~奇集』も一生ものです。『ザ・ヒストリー・オブ・ジャパニーズ・カントリー&ウエスタン』(テイチク)は好企画好内容なのに原盤データの無記載は誠に残念。スカイステーションの頑張りは並々ならぬものがあるし、復刻/発掘専門のハガクレ・レーベルの発足も喜ぶべきもの。徳間/ミノルフォン/大映を再び整備している“徳間ジャパン名盤コレクション”もありがたい。
 ④はフリクションのレックやチコ・ヒゲが関わっていたというのみならず、このような即興演奏が記録されていたことだけでも奇跡。さすがはキャプテン・トリップ。⑥はもちろんタージ・マハル旅行団『一九七二年七月十五日』と併せて聴いて下さい。演芸にコミック・ソングの箱もの⑨は古川緑波や岸井明が聴けるし初CD化多数でうれしすぎます。

四人囃子『From The Vaults』
(2003年2月号)



2003年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① 榎本健一『唄うエノケン大全集~蘇る戦前録音編』
② 頭脳警察『Live Document 1972~1975』
③ SS『日本高速音楽伝説 序章』
④ とうごうけん、J・A・シーザー、山谷初男ほか『薔薇門+ツブシタレ』(LP+CDシングル)
⑤ 灰田勝彦、暁テル子、市丸、服部富子ほか『東京の屋根の下~僕の音楽人生1948-1954/服部良一』
⑥ 陸上自衛隊中央音楽隊、海軍軍楽隊ほか『黒船以来~日本の吹奏楽150年の歩み』
⑦ ウイリー沖山『アンソロジー・キング・オブ・ヨーデルVol.1~スイスの娘』
⑧ ザ・ゴールデン・カップス、パワー・ハウス『The Golden Cups』
⑨ 外道『熱狂の町田ポリス'74』
⑩ 柴田和志『チャー坊遺稿集1950~1994』(CD付き書籍)

エノケンはアナログ時代から待望の“戦前”をがっちりまとめていただいたものなので感慨もひとしお。『エノケン ミーツ トリロー』も最高で、併せて1位ということに。今後日本のロック発掘/復刻はこうありたいとの“形”を示した頭脳警察の箱、現場そのものが再生したような痛さが凄いSS。付録も含めてLPで体験した方が絶対お得な『薔薇門』。かねてよりまとまるのを切望していた服部ビクター編。キングの“すべて”シリーズの企画構成はCDならではの魅力。これまでも素晴らしかったが03年はより加速した感が。今後も要注目です。ウイリー沖山さんの凄さがよくわかった『スイスの娘』、カップスの箱もさすがで、外道は“現在進行形”というところが凄い。村八分はハガクレからの発掘ももちろんなのだが、チャー坊の魅力、才能の奥深さがじっくり伝えられた感動から『遺稿集』をあえて挙げさせていただいた。山口百恵、赤い鳥の箱も丁寧な作り見事だった。音源の驚きと造型の美しさ楽しさがさらに合致した凄玉の登場の気配が、なんとなく、ありませんか?

(2004年2月号)



2004年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① はっぴいえんど『はっぴいえんどBox』
② ザ・ルースターズ『Virus Security~Sub Over Sentence』
③ ジュン上久保『サンフランシスコの奇跡』
④ 麻里圭子、杉並児童合唱団ほか『21世紀のこどもの歌』
⑤ 大滝詠一『イーチ・タイム~20th Anniversary Edition』
⑥ ダディ竹千代&東京おとぼけCats『Dead Stock』
⑦ カミーノ『Live 1976』
⑧ The Good-Bye『Ready! Steady!! The Good-Bye!!!』
⑨ 大野克夫《幻のメロディー》(2004年発売分全2タイトル)
⑩ 異邦人『コンプリート・嗚呼‼ 花の応援団』

 復刻や発掘も“再々発時代”に突入しているわけですが、それだけに“初もの”は念の入ったものが増えていますし、マニア眼の執念に感服させられることもしばしばです。コンピレーションも趣向を凝らしたものが多々見受けられました。相変わらず“気軽なコンピ”は少なくないですが。歌謡曲、特に演歌を真正面からたっぷり編んだ資料性の高いやつがないのは何故でしょうか。サウンドやリズム偏重傾向ゆえかもしれません。映像関係も、ジョニー・ルイス&チャーの『Free Spirit 1979.07.14』や『ライブ帝国』シリーズ、外道の『Video Gedo』、『夕焼け祭り』など心動かされるものが多かった。クラウンとコロムビアからも歌謡曲でいい復刻が目立った。目方誠時代をも含む美樹克彦の『ゴールデン・ベスト』や堺正章の『しんぐるこれくしょん』、青山ミチの『ゴールデン…』など特にうれしいものだった。柳家金語楼のヒコーキ~コロムビア音源集『落語集』も素晴らしい。個人的に04年はちょっと疲れぎみだったので“チョンワ”で根性入れ直し用に⑩は最高であります。

(2005年2月号)



2004年 私の収穫

サン・ラー『Space Is The Place』(フランスBlue Thumb BT10.021 [LP] 1973年)

 懸案だった『サン・ラー伝』もやっと出版に漕着けたが、その書の校正作業中、久々に出ものの報を耳に。サターン盤数枚とともに出会ったのがこれ。超有名盤だが、仏盤の4チャンネル仕様とは驚き。かのロバート・L・キャンベル氏のディスコグラフィーにも出ていない。ジャケの“QUADRAPHONIC SOUND”の文字見たら放っておけなくなりました。33年前、我が家のステレオ・セットは4チャンネルだったのです。
●都内某レコード店で

(同上)



2005年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① 村八分『村八分BOX』(CD+DVD)
② 大滝詠一『ナイアガラ・ムーン』
③ RCサクセション『ラプソディー・ネイキッド』(CD+DVD)
④ ムーンライダーズ『ムーンライト・リサイタル76』
⑤ フリクション、Phew、突然段ボールほか《Pass No Past》(全6タイトル)
⑥ 横尾忠則『オペラ横尾忠則を唄う』
⑦ 富岡多恵子『物語のようにふるさとは遠い』
⑧ 『日活ニューアクションの世界~無頼・殺せ1968-71』
⑨ デイヴ平尾『一人~コンプリート・ソロ・コレクション 1972-1987』
⑩ 北原白秋、与謝野晶子、萩原朔太郎『よみがえる自作朗読の世界』

 すいません。10ワクが05年は本当にキツかった。『ノンヴィンテージ~林立夫セレクション』の視点、構成の妙は今後さらなる展開を予見させる画期的なものだったし、東芝とテイチクから2種作られた漣健児作品集も泣けるほどよかったし、ファンに待望でしかも活動の深さも知らしめるものだった楳図かずお『闇のアルバム』、ワンステップ・フェスティヴァルの諸々、プラスチックス関連(実は一時期追っかけでした)、ブレッド&バターの諸作など、落とせない良復刻、発掘、コンピレーション続出でした。コロムビアのちあきなおみのアルバム復刻、ビクターの“ビクター流行歌名盤・貴重盤コレクション”という音質やオリジナル盤のたたずまいに気を配った作業もうれしいものでした。こういうものは、やりすぎか?というぐらいでいいと思います。もっともっと、よろしくお願いします。ライヴ音源はまだまだ“発見”が進むものと思います。現場の空気がもっともっと解き放たれていくことを期待しています。歌謡曲も様々な“編み技”でもっと楽しみましょう。

村八分『村八分BOX』
(2006年2月号)



2005年 私の収穫

ダーレン・ラヴ「(Today I Met) The Boy I’m Gonna Marry/My Heart Beat A Little Bit Faster」(カナダPhilles PH111[7インチ・シングル]1963年)

 さらにシングル盤購入に拍車のかかった年。フィル・スペクター関係は同じ作品でも複数入手したくなる。これはカナダ盤、クレジットの位置等、レーベルのデザインは異なりますが、ちゃんとPhilles Recordsと記されロゴも入り番号も米と同じ111。この色にグッと来ました。黒地に銀の文字とは。ちなみにB面は“My Heart Beat A Little Bit Faster”の方でした。音質は米盤よりやや落ち着いたもの。店のお兄さんが棚の奥から引っ張り出してきてくれました。
●ニューヨーク・マンハッタンのCDを置いていないとあるレコード店で

(同上)



2006年 日本のロック/歌謡曲/芸能

① バートン・クレーン『バートン・クレーン作品集~今甦るコミック・ソングの元祖』
② 二村定一、川畑文子、ミッヂ・ウィリアムスほか《日本のジャズ・ソング:戦前篇》(全6タイトル)
③ 三升家小勝、春風亭柳枝、桂春團治ほか《昭和戦前面白落語全集》(全2タイトル)
④ 西岡恭蔵、ダッチャ、ディランⅡほか『1972 春一番』
⑤ 弘田三枝子『弘田三枝子・じゃず・これくしょん』
⑥ 池玲子『恍惚の世界』
⑦ 頭脳警察、井上忠夫、荒木一郎ほか『鉄砲玉の美学~中島貞夫の世界』
⑧ ガロ『ガロ・ボックス』
⑨ 三上寛、中山千夏ほか『赤塚不二夫のまんがNo.1シングルズ・スペシャル・エディション』
⑩ 守屋浩『青春ソング・コレクション1959-1963』

 バートン・クレーンは内容の衝撃度、復刻の姿勢、レア度、価格どれをとっても理想的な素晴らしい盤でした。これは制作者の個人的執念と肩ひじ張らない柔軟な、それでいて厳密さを持った音楽とのつき合い方のたまものに違いありません。頭が下がります。学問としての大衆音楽研究がしばしば息苦しい結果をもたらすのとは正反対のものであることを我々は忘れてはなりますまい。
 待望の作品、地味ながら貴重度の高いもの、驚異の音源等充実した年だった。フリクション、タイツ、ウラワ・ロックンロール・センター関連の作品、筒美京平、村田英雄の『おはこ集』など、ありがたいもの。『ミソラヒバリ リズム歌謡を歌う』でひばりさんの凄さに今さらのように打たれた。個人的には弘田三枝子さんのとんでもなさを直に知った一年でもあった。ミコちゃんの『じゃず・これくしょん』も素晴らしい箱です。この人こそひばりさん同様本物の天才だと思いますが、それを文字で伝えることの難しさを実感させられもしました。記録資料だけではわからないのもまた音楽。

(2007年2月号)



2006年 私の収穫

西田佐知子『西田佐知子歌謡大全集』(ポリドールSMR9011~4[LP4枚組]1968年)

 シングル盤を中心にあれこれ手を出してしまう悪癖は直りませんが、モノラル盤からの発見は続いています。今までの不勉強猛省の日々であります。これもそのひとつ。LP4枚組、ヒット曲中心の箱ものですが、ガッシリした作り、ピンクに銀の箔押し文字にやられて購入。盤の状態も極上。特に初期の録音は低音部のしっとりした響きが素晴らしく、佐知子様のクールな歌声とのコントラストにもシビレました。昭和20~30年代の歌謡曲の、音からの探査、やめられません。
●都内某中古レコード店で

(同上)



2007年 日本のロック

① 遠藤賢司『遠藤賢司実況録音大全〔第一巻〕1968-1976』(CD+DVD)
② 3/3『3/3』
③ 細野晴臣『ハリー細野 クラウン・イヤーズ 1974-1977』(CD+DVD)
④ THE FOOLS『Weed War~LEGACY EDITION』(CD+DVD)
⑤ 多羅尾伴内楽團『多羅尾伴内楽團Vol.1&2~30th Anniversary Edition』
⑥ 遠藤ミチロウ『飢餓々々帰郷』(CD+DVD)
⑦ 森下登喜彦と彼の友人達『TOCCATA ぷ-1』
⑧ じゃがたら『家族百景』
⑨ あがた森魚『あがた森魚コンサート~〈永遠の遠国〉at渋谷ジアン・ジアン』
⑩ 内田裕也とフラワーズ『CHALLENGE!』

 紙ジャケ化の波は当然のように日本の音楽にも及んでいて、もちろん成果を上げている。音もそれにともなってリマスタリングがきちんとほどこされて、耳が良好に聴取欲を高めることも増えた。フリクションの一連の復刻作業、大貫妙子の初期作品群、じゃがたら、あがた森魚、ベルウッドの諸作など、ビット数が上がったというだけではないオーディオ的探究心の増強が感じられるもので、ずいぶんと楽しめたし、まだまだ未知の領域があることを知らされた。⑩はコロムビアで始まった“日本ロックアーカイヴス”シリーズのひとつ。このシリーズは帯を含めて美しい仕上がり。しかもこのフラワーズにはシングル音源とともに未発表曲が2曲も入っている。このシリーズではエイプリル・フールがオリジナル仕様の見開きジャケットでお目見えしたのもうれしいものだった。コロムビアではアナログ盤による復刻も歌謡曲やジャズを中心に再開され、そちらでも素晴らしい盤が登場しているので、ロックのほうでもアナログ盤化が進むことを大いに期待しております。『三上寛の世界』なんて大きいジャケットだと別格の味わいだと思う。
 ⑨はあがたさんの発掘ライヴ音源。長年活動し続けている人ならではの魅力あふれるもので、新作と併せて聴くとさらに効く。発掘ライヴ音源ではムーンライダーズの『1979・7・7・アット・久保講堂』も当然心に染みるものだった。クリエイションがフェリックス・バッパラルディを迎えて敢行した76年の武道館のライヴ音源やNON BANDなども印象に残る。
 リマスタリング・シリーズの一環として、オリジナル仕様で初CD化されたのが⑧。じゃがたらの陽気な破壊力がよくわかる待望の一作。⑦は“ポリドールMR5000番台”シリーズのひとつ。70年代の音楽シーンの、奥が深いような幅が広いような強引で意欲満々で技巧に富んでいながらしばしばギクシャクしていて混沌が天然醸造されてプログレッシヴに特殊性がかもし出されていた側面がよくわかる貴重なラインナップである。
 歌う巡礼という趣さえある遠藤ミチロウのスターリン時代からの足跡が一気にわかるのが⑥。ミチロウの強さと柔軟性、繊細さに胸を打たれる。これと④は80年代の日本のロックのコアのひとつ。これまで納得のいかないCDしかなかった『Weed War』がやっと、メンバー立会いのもとに復刻が成った。しかも極上のライヴ音源も併せて。めでたい。
 ナイアガラ30周年プロジェクトはまだまだ続く(はずです)が、⑤は発表当時の不勉強を反省するにはこの上ない逸品。このサウンドと音楽性は他に類を見ないもの。ディープなファン向きだなどという風評に幻惑されてはいけない。ここから入るナイアガラ道とてあってしかるべきである。⑤と同時期の独自探究ぶりもひとつにまとめた箱③も悶絶もの。ここに収められた細野晴臣のおもしろさと重要性を当時から現在に至るまでずっと折りに触れて各所で語ってきた身としては感涙にむせぶしかありませんでしたが、当の細野さんの口から「当時これでよろこんでいる人なんていないと思っていた」といわれて「そんなことありませんよ!」と思わず語気が強くなってしまいました。②の登場は衝撃度からいけば超がつくもの。これこそ伝説の一作。一時は存在しないのでは、という噂まであったが、ついに広く聴けるようになった。じっくりとつき合いたい。未発表音源もたっぷりでフリクション前史が音でわかるのはありがたい。ありがたいといえば、①以上のものはそうあるものではない。何故遠賢さんが特別なのか、何故今も不変なのか、この箱で心を洗い清めてとことん考えてみよう。もちろん結論はない。これが“第一巻”である。聴き手の営みとて果てしないもの。果てなどあったらつまらない。

遠藤賢司『遠藤賢司実況録音大全〔第一巻〕1968-1976』
(2008年2月号)



2007年 私の収穫

キャプテン・ビーフハート&ヒズ・マジック・バンド『Trout Mask Replica』(米Straight STS1053[LP]1969年)

 正直に告白しますと、俺はこの作品、32年間ずっとリプリーズ盤で聴いていました。オリジナルのストレイト盤、気がつけばえらく高くなっていてついつい買いそびれていたんですがもう覚悟を決めて買いました。で聴き比べて見たら、リプリーズ盤のほうがカッティング・レヴェルが高かったんです。いや、ほんとに。低音が派手に出ているのは70年代プレスのほうだった。しかしじっくり聴き込むにはオリジナル盤の音像のほうがうちのシステムには向いている、と思うことにしました。付録とともに大事にします。
●都内某中古レコード店で

(同上)



2008年 日本のロック

① 鈴木茂『鈴木茂ヒストリー・ボックス~クラウン・イヤーズ 1974-1979』
② J・A・シーザー『天井桟敷音楽作品集』
③ ヨシ・ワダ『The Appointed Cloud』
④ フード・ブレイン『新宿マッド』
⑤ 桜川ぴん助、博多淡海、嘉手苅林昌ほか《日本禁歌集シリーズ》(全5タイトル)
⑥ 《岡林信康 復刻シリーズ》(全10タイトル)
⑦ 大滝詠一『ナイアガラ・カレンダー~30th Anniversary Edition』
⑧ 四人囃子『From The Vaults 2』
⑨ 音羽信『わすれがたみ』
⑩ カウント・バッファロー『ウガンダ~アフリカン・ロックの夜明け』

 ハックルバックのライヴ音源がひとつにまとめられたことはたいへん喜ばしい出来事であったが、『バンド・ワゴン』と『ラグーン』の名作ふたつをリミックスしてボーナス・トラックまでつけてしまったことにも驚いた。ボックスとリミックスの両方を合わせての首位と考えていただいてもよいが、いずれにしても鈴木茂の自作へのあくなき再探究は特筆すべきものである。
 サイケデリックでプログレッシヴ、呪術的な世界という定説を軽くどうでもいいものにしたJ・A・シーザーの5枚組もものすごいもので、日本のロックの深さを感じるもよし、誰にも似ていないことに震えるのもよし。ハードさと柔らかく心なごませるものとがまざり合っていて才能の深さがよく伝えられている。
 恐るべきサウンドが多くの人に知られず埋もれていたということではヨシ・ワダの作品は他に比べるものがほとんどない。サウンド・インスタレーションはその場所全体を作品化させることだと思うが、それだけに記録することに技術的困難が伴うこともままある。それだけにヨシ・ワダのCDはオーディオ作品としての見事さもあって特筆すべきものだと思う。
 お蔵出しということでは若松孝二監督作品のサウンドトラックが3作品リリースされ、いずれも驚きのものであった。中でも『新宿マッド』でフード・ブレインのとんでもない演奏が聴けたのは衝撃だった。厳密にいえばフード・ブレインというグループ名がつく直前のものということになるかと思われるが、この破壊力は特別だ。フード・ブレインのライヴ音源などというものはないのだろうか? あるところにはありそうだが。
 竹中労の大仕事がやっと復刻された。『日本禁歌集』シリーズは通販のみという販路もオリジナルを踏襲している。サウンド・ドキュメンタリーは聴き込むほどに興味が広がってゆくものだ。日本の各地に広く知られぬまま消えていった名人異才がいたことを想うのであった。
 ついにというかやっとというか、URC時代の岡林信康作品がきちんと、ライヴ音源も含めて、CD化された(09年3月でシリーズ完結)。歌の力について改めて考えさせられる。リマスタリングが素晴らしく、音楽の背後の空気を生々しく伝えるものとなっている。
 ナイアガラ30周年記念プロジェクトのとどめを刺した『カレンダー』は、左右が逆だったことが判明するなど発見だらけで、アナログで聴き込んだ身としては、さらなる聴き込みをうながされる思いの名CD化というべきものであった。
 これまたついに出た四人囃子の箱は、『一触即発』周辺の音源がまとめられたのが実に感慨深いものであった。一曲一曲をこれほど緊張感を持って聴いたのも貴重な体験であった。ライヴ音源とはまた別の生々しさが封入されている。
 音羽信は待望のCD化。同時にCD化された吉野大作とともに70年代前半の横浜シーンの特異性を実感できる貴重なもの。たゆたう幻想的な詩情は唯一無二。海外の影響のほとんど感じられない天然のアシッド感というべきものであろう。
 カウント・バッファローの『ウガンダ』は聴いてびっくり。このパワーの根源はどこにあるのか、と探りたくなる。まだまだとんでもないものはあるものだと思い知らされる。ライヴ音源はどこかの家の押し入れにまだひっそりねむっているのでは、と想像させるわけだが。ある日突然昔日の見たこともないような映像がネット上にアップされる時代。期待はまだまだつのる。音響面では再CD化にあたってもそれぞれきちんとした配慮が成されるようになっており、この先が楽しみである。

(2009年2月号)



2008年 私の収穫

ニール・ヤング「Cinnamon Girl/Only Love Can Break Your Heart」(米Reprise GRE0746[7インチ・シングル])

 モノーラルへの没入高まる一方。銘カートリッジ、シェルター501ⅡMONOの素晴らしさに感動の毎日の中で、十数年前に手元から消えたシングル盤と再会。と思ったらこれは再プレスの廉価盤。しかもB面も違う。一瞬がっかり。しかしミックスはオリジナル・シングルと同じでアルバムとは別。途中でニールの“OK”という声が聴けるんです。さらにこれモノーラルなの(B面も)。ベースとドラムス太く、ギターの厚みも、OK。米オリジナル・アルバムと較べてもこちらの方が俺は好きだ。モノーラル万歳。
●都内某有名レコード店で安価にて購入

(同上)



2009年 日本のロック

① タージ・マハル旅行団『「旅」について』(DVD)
② はちみつぱい『THE FINAL TAPES~はちみつぱいLIVE BOX 1972-1974』
③ リザード『ブック・オブ・チェンジズ~コンプリート・ワークス・オブ・リザード』(10CD+DVD)
④ キング・ノベルティ・オーケストラ、サクライ・イ・ス・オルケスタほか『サロン・ミュージック集/杉井幸一』
⑤ 戸川純『TEICHIKU WORKS~JUN TOGAWA 30th ANNIVERSARY』(6SHM-CD+3DVD)
⑥ 岡林信康《紙ジャケット復刻シリーズ》(全9タイトル)
⑦ 耳鼻咽喉科『偉大(はずかしく)なる2年~Anthology 1981-1983』(2CD+DVD)
⑧ 小坂忠『Chu’s Garden』(8CD+DVD)
⑨ 突然段ボール『抑止音力』
⑩ 山下達郎『TATSURO FROM NIAGARA』

 驚きの発掘というものがまったくなくなってしまうことはないが、それがめずらしくて当たり前、という感じで受け止められては悲しい。あるいは、めずらしいから貴重である、と決めつけてしまうのもちょっと違うと思う。貴重かどうかはミュージシャンと聴き手の相互理解によって決まるわけであるからして。
 こうしてリイシュー・ベスト10を選びつつも順位をつけることには今も抵抗がある。それでもあえてつけているということは、音盤作品としての趣の質量の差を個人的に考慮した結果であることを改めて申し述べておきたい。それというのもこうしたリイシュー盤の多くは、銘記されていないが、1回きりのプレスである場合がほとんどだからで、商品として市場を席巻することなど目論まれていはしない。音源だけでではなく、音盤そのものに対する愛情が目減りしてしまうのが世の流れか。それでもあえてされる復刻。発掘作業にはすべからく敬意を表して当然だとしみじみと思う1年でもあった。
 やはり存在の特異性は映像をともなえばなおさらよくわかるとしみじみ見入ってしまうタージ・マハル旅行団の①は世界遺産だろう。地球全体の動きが音楽になっている一例として後世に伝えねばならぬ。
 こういうものを長年待っていた。ライヴでなければ実像の端にさえ触れにくいはちみつぱい。まとめて聴いてこそ存在の重要性もわかろうというもの。先進性とかではなく、音楽をやる喜びこそがこのバンドの肝だったことを改めて知る思いだった。ゆるやかな緊張感とでもいうべきものを3分間で知ろうとしてもそうはいかないのだ。
 今までになかったのが不思議な気もするのが③。80年代のバンド群は現役であるものも少なくないゆえ過去を掘り返しにくいという側面もあるかもしれないが、リザードの実験精神はもっと知られてしかるべきだろう今ならなおさら。
 戦前の音楽家の素晴らしいひらめきと実践力に驚かされた④。アイデアのおもしろさのみならず、演奏も歌も熱意にあふれているので、発見多く学ぶべきものも多い。音楽が日々進歩しているなどというのは戯言だと思わずにいられない好復刻である。これは厳密にいえばロックではないから本項で挙げるべきではないかもしれないが、洩れてしまうのは忍びないので選出させていただいた。
 なにしろ装丁が素晴らしい⑤。中身ももちろん素敵だ。置いてながめるだけでも豊かな心もちになれるのもこういう箱ものならではだと思う。これまで聴きたくとも聴けなかった音源が聴ける喜びを満喫するならシリーズ化されたものととことんつき合うのが筋だろうと思わせる⑥。(美空)ひばりさんの飛び入りステージが聴けるなんて。それが新たな作品を生むことにもつながるのだから音楽はおもしろい。
 まさかこういう形で、という衝撃の⑦は、実は俺も通っていた大学の一室の音も聴けて個人的発見も。まとまってみるとさすがだなあ、と感慨ひとしおだったのが⑧。これまで何度かCD化されてきた音源も新たな音質で聴くと意外な感動があるのもまた事実。どうせならLPで、というのは無理な望みだろうか。逆に⑩はかつてのLPは味気ないものだったがCD化によって、どう考えても非凡な人がやはり最初から特別だったことを思い知らされることになったもの。音盤は形式ではなく作り手の意志・意欲が如実に映し出されるという当たり前の事実を再々考する日々ではあります。
 思えば90年代から今もずっと聴き続けている数少ない作品である⑨がその底力をわかりやすく音に反映させてよみがえったのは心底うれしい。悩みある人にこそおすすめしたい良薬のような盤です。

(2010年2月号)



2009年 私の収穫

ニール・ヤング『Greatest Hits』(ニュージーランドReprise 252711[LP]1985年)

 毎度のことながらアナログだらけの日々。09年はザ・ビートルズの世界各国盤をちょいちょい聴くのが楽しゅうございましたが、だったら他の人のもおもしろかろう、と入手しましたニュージーランド盤。81年までの11曲が入ったいわゆるベスト盤ですが、「サザーン・パシフィック」とか「ウォーク・オン」という選曲が味わい深い。そのうえ音質がたいへんよろしい。低音の張りと艶、歪みの厚み、空気の清さと残響の豊かさ。曲によってはオリジナル米国盤よりぐっときました。オセアニアのいい仕事です。
●都内某中古レコード店にて入手

ニール・ヤング『Greatest Hits』
(同上)



2010年 日本のロック

① 遠藤賢司『遠藤賢司実況録音大全 第二巻 1977-1986』(9CD+DVD)
② クールスR.C.『GREAT & REALLY ROCKIN’GIANT~35th CD & DVD BOX ポリスター・イヤーズ』(10CD+3DVD)
③ 頭脳警察『無冠の帝王~結成40周年BOX』(7SHM-CD+2DVD)
④ 村八分『ぶっつぶせ‼~1971北区公会堂Live』
⑤ サンハウス『THE CLASSIC SONHOUSE~35th anniversary』
⑥ 中山英二、片山光明、三上寛ほか『ジョニーズ・アンダーグラウンド~ベスト・オブ・ジョニーズ・ディスク』(2CD)
⑦ MIRRORS、MR.KITE、FLESHほか『ゴジラ・スペシャル・ディナー』(2CD)
⑧ ザ・フォーク・クルセダーズ、高石友也ほか『京都フォーク・デイズ』(4CD)
⑨ EP-4『Multilevel Holarchy』
⑩ 浅川マキ『Long Good-bye』(2CD)

 発掘作業もレコード会社の倉庫から、当時の現場人たちの自宅押し入れ中心に移行してきた感は強い。ライヴ発掘作業70~80年代にカセット・テープで日々録音されていた、と考えられなくはないが、保管状態については不安がもちろんともなう。音質を優先するあまりこれまでオクラになっていた音源は多数あるだろう。と我が家の押し入れをほじくっていて思ったりする。特に80年代はインディペンデントでバンドや演奏者が大量出現したときだけに、発掘はまだまだこれから、と意欲を燃やしていた人もいるに違いない。聴きかえしてみて、カセット・テープの音のやわらかい音の豊かさに驚いた、という声を耳にしたこともある。中でもディスクユニオンのパンク~ニューウェイヴ期作品の復刻/発掘作業は注目に値する。⑨はその中のひとつだが、当時を知ろうが知るまいが心動かされるものだ。⑦は日本のパンク史上黎明期の最重要音源を生々しく伝えている。当時を思い起こすというより、30年前が今と時空つながりであることを改めて実感させられる。
 そういう点では40年前も1年前も同じひとつのものと思い知らされる箱が①である。押し入れ発掘の鑑でもある。箱ものならではの充足感はやはり別格だ。②も③も⑤も年輪のたまものであると同時に現役であるからこその迫真感を聴く側が必然的に補完してしまうのである。④のひりひりした感覚も他にありようがないものだし⑥の奇想天外ともいえる度量の広さは凄いものだ。加藤和彦の死を考えさせられもする⑧にはフォークが“生まじめなパンク”的音楽だった時代について再考を促されもする。真夜中に聴くと身体の奥へ奥へと入ってきて離れなくなってしまう魔性を⑩は持っている。リマスタリングされオリジナル・アルバムがまとまって再発されるという。浅川マキは全録音を一つの箱に集成するべきだと思う。それは世界遺産だろう。CDにこだわる必要はない。未知の人々に対して、聴けるように状況を整えておくことも、現場を知る者の使命だと俺は思う。

(2011年2月号)



2010年 私の収穫

『Lunchconcert For Three Barrelorgans』(オランダInstant Composers Pool ICP003[LP]1969年)

 アナログ・シングルを相変わらずちょこちょこ買うのが中心なのでどちらかといえばLPは吟味して購入している(錯覚かもしれないが)。年に何度かの西方仕事の際どうしても立ち寄らずにはいられない“魔性の店”で薦められ視聴10秒で即決購入。オランダの広場での3台のストリート・オルガンの即興合奏を収録したもの。69年春の演奏だが、音像が素朴なステレオで実に生々しい。街頭のざわめきが背景を彩る。3台それぞれの個性が交差し、ほのぼのとした中に攻撃的音群が無邪気に響き合う珍盤。
●大阪・ジャズボレコードマート店頭で

(同上)



2011年 日本のロック

① ガセネタ『ちらかしっぱなし~ガセネタ in the BOX』(5CD)
② 浅川マキ《オリジナル・アルバム紙ジャケット復刻》(全24タイトル)
③ エド&じゃがたらお春『LIVE 1979』
④ 上条恒彦&六文銭、かぐや姫ほか『木田高介アンソロジー~どこへ』(2CD)
⑤ 大滝詠一、シュガー・ベイブほか『NIAGARA CD BOOK Ⅰ』(12CD)
⑥ 鈴木慶一とムーンライダーズ『火の玉ボーイ』(SHM-CD)
⑦ 李礼仙、山下洋輔ほか『状況劇場~劇中歌集』
⑧ EP-4『リ・ン・ガ・フ・ラン・カ~DELUXE』(2CD)
⑨ 五つの赤い風船『五つの赤い風船 解散コンサート記録~ゲームは終わり』
⑩ 《EMI Rocks The Firstシリーズ》(全36タイトル)

 ディスクユニオンのスーパーフジが頭抜けて興味深く驚き多い発掘復刻作業を続けた。2012年もまだまだ続くという。80年代以降は録音できること/録音を残しておくことの意義を今よりもっと重くとらえていたのかもしれない。だから人知れず録られていたものの訴求力が高い、のではないか、と考えさせられた。浅川マキがオリジナル・アルバムの形で聴けるありがたさ。いつの時代のマキさんも素晴らしい。『NIAGARA CD BOOK Ⅰ』は30周年盤よりさらに耳の心を揺さぶられるリマスター術が。木田高介の天才性の一端がやっとまとまった意義は大きい。『火の玉ボーイ』も見事な音。佐藤薫関連作品の数々にまたしても考えさせられ、江戸アケミの“暗黒大陸”以前のライヴ音源に胸打たれた。状況劇場は『四角いジャングルで唄う』の復刻かなわず残念。“風船の解散コンサート”は実際に見に行っていたので空気が一気によみがえった。それにしてもガセネタ箱!!!!!! 夢にちがいない。

ガセネタ『ちらかしっぱなし~ガセネタ in the BOX』
(2012年2月号)



2011年 私の収穫

ザ・ビートルズ『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(英Parlophone TA-PMC7027[オープン・リール・テープ]1967年)

 ここ数年来のビートルズ・アナログ盤研究の成果をやっと2012年に書籍化できることになった。その作業の一環で入手したのがこのオープン・リール。英国版モノラル音源が入っている。この音はヤバイ!×100。立体感、鮮明度、親和力、まろやかさ、力強さ、すべてに溜息が出る。これまで様々な『サージェント・ペパーズ』を聴いて来たが、やっと辿りついた、という感慨無量。ならば他のアルバムは? といけない扉が開きつつある、ということにしておきます。
●友人を介して入手

(同上)



2012年 日本のロック

① タコ『タコBOX Vol.1 甘ちゃん』(4CD)
② J・A・シーザー『伝奇音楽集~鬼火 天井桟敷音楽作品集Vol.2』(5CD)
③ 古川壬生『壬生』
④ 山平和彦《未発表音源アーカイヴス》(全3タイトル)
⑤ エド『街の灯』
⑥ 鈴木慶一『The Lost SUZUKI Tapes 2』
⑦ 柳ジョージ『アトランティック・ソロ・ワークス 1982-1993』(13CD)
⑧ 長谷川きよし『街角』
⑨ デ・スーナーズ『テレサ』
⑩ はっぴいえんど、高田渡ほか《ベルウッド40th アニヴァーサリー・コレクション》(全51タイトル)

 永年親しみ、聴き続け支持し時に勝手に師事してきた人の死に、2012年はしばしば考えさせられた。ロックに限ってもそれは小さな出来事ではなかった。自分のやってきたことやってこなかったこと、やらねばならぬことの色々に胸が痛くなった。死んだ人のことより今生きている人のことを、という方々もおられるが、我々は死者に生かされている、ということを忘れてはならない。その意味で、死者は生き続けている、のだということを。
 選出したものはいわゆるレア度の高さで選ったものではない。できるだけ“初復刻/発掘”を優先した。山平和彦『放送禁止歌』の初回プレスが聴けるようになったのはうれしい。古川豪の『フルッチンの唄』も忘れられない強烈盤。エドがCDで聴けるようになったのも事件。タコ周辺は今後も掘られるとのこと。EP-4のライヴも12年の一大事だった。過去と未来を結ぶ活動に目と耳の窓あけておかなければ。

(2013年2月号)



2013年 日本のロック

① J・A・シーザー『天井桟敷音楽作品集Vol.4 身毒丸~草迷宮』(5CD)
② 初音家小太三丸、初音家太三郎ほか『河内音頭夢幻 初音家~浪曲音頭の誕生』
(6CD)
③ RCサクセション『悲しいことばっかり~オフィシャル・ブートレグ』
④ 突然段ボール『突段 未発表音源発掘』(10CD)
⑤ 絶対零度『絶対零度Ⅱ 1980-1981』(2CD)
⑥ ザ・タイガース『ザ・タイガース フォーエヴァー DVD BOX~ライヴ&モア』(5DVD)
⑦ あがた森魚『あがた森魚とはちみつぱい1972~1974』
⑧ 都会の村人『退屈しのぎ』
⑨ タイムスリップ『タイムスリップ』
⑩ カーネーション『CARNATION EARLY YEARS BOX』(4CD)

 作ったその人ばかりでなく、聴いていた人、関係していた人、あるいはその家族や友人の家の押し入れや屋根裏から、ある日ふいに発見されるテープというものはやはりあるものだなと感慨一入。そのようなものがまとまって聴ける箱ものやシリーズに向き合うと身が引き締まる。秘蔵、というより録ったり保存していたのを“すっかり忘れていた”という場合も少なくないだろう。現在進行中の“忘れもの発掘計画”もあると耳にしている。80年代の、特に前半の埋蔵物に期待が高まる。
 選外ものでは、赤痢やほぶらきんのボックス、ゴダイゴ関係のシリーズも楽しくうれしい驚きがあった。グリーンウッド・レコーズの〈URC“最後の蔵出し”復刻初CD化シリーズ〉はありがたく、新鮮な発見の連続であった。発売日の関係で14年度扱いになってしまった直枝政太郎(政広)の『東京ゴジラ』のカセット・テープそのものの音を深めたリマスタリングに感動しました。

(2014年2月号)



2013年 私の収穫

一節太郎『根性の唄』(クラウンLW5169[LP])

 歌謡曲のアルバム、特に60年代以前のものは見つかりにくい。一節さんのアルバムは3作所有しているが、それぞれなんとなく物足りない思いの残るものだった。大好きな「土方一大御意見無用」の入った盤でぐっとくるのはないものかと探し続けて、やっとめぐり合いました。岩手県花巻市。生まれて初めて行った岩手県は土地のスケールの大きさに驚きました。小さなプチプチのあるビニール・コートの腰のない紙のジャケットに心魅かれるのでした。
●花巻市のリサイクル・ショップで

一節太郎『根性の唄』
(同上)



2014年 日本のロック

① 遠藤賢司『遠藤賢司実況録音大全[第三巻]1987-1991』(9CD+DVD)
② 陰猟腐厭『初期作品集 1980-82』
③ ハート・オブ・サタデイ・ナイト『アンリリースド・ジェムス 1975-1977』
④ ノラ『ノラVol.1』
⑤ ティアドロップス『ラヴ・ゲリラ 1988-1989 LIVE』
⑥ スカイドッグ・ブルース・バンド『スタジオ・ライヴ 1976.3.9』
⑦ 山崎ハコ《デビュー40周年記念復刻シリーズ》(全8タイトル)
⑧ キングトーンズ《SMSイヤーズ》(全3タイトル)
⑨ ムーンライダーズ『Moonriders Live at FM TOKYO HALL 1986.6.16』(3CD)
⑩ 大滝詠一『Best Always』(3CD)

グリーンウッドの丁寧な復刻作業は今年も心に強く残った。よしだたかし、ひがしのひとしがCDできちんと聴けるのは大切なことだと思う。スカイドッグ・ブルース・バンドのスタジオ・ライヴは盛り上がるし、五つの赤い風船の箱に彼らの特性を改めて考えさせられた。シリーズものでは“ライトメロウ”がくせになる。車も免許もないのにドライヴしたくなるのは人の性の基底を突いているからか。陰猟腐厭にはどうしたって唸る。『抱握』もさすがの音だった。さらにリリースを願う。ハート・オブ・サタデイ・ナイトにぐっときたのは匂いがパックされていたから。ノラの爽快感も貴重だ。山崎ハコの底力を2014年は新作も含めて思い知った。ティアドロップスはどんと大箱というわけにはいかぬものか。もっと見たい。エンケンさんの大全第三巻は最もじっくり見ていたころに突入。いろいろ思い出しては感慨の連続だった。毎年大晦日は大滝さんをつい聴いてしまう、と思う。

(2015年2月号)



2014年 私の収穫

下谷二三子「ゴルフ拳/お座敷花嫁さん」(キング EB211[7インチ・シングル]1959年)

 思えば45年前、コント55号育ちの俺はTV「裏番組をブッ飛ばせ!!」に毎週コーフンしていた。二郎さんがゲスト女性(女優や歌手)とジャンケンする。負けたほうが服を脱ぐ。それだけ。それだけの凄さ。そのときの音楽が「野球拳」だったのです。青木はるみに始まり集めてみると、「相撲拳」「プロレス拳」などもありました。お座敷ののほほんとしたお色気がなごみます。ゴルフも“拳”になっていたのかと感慨。その他野球拳の別ヴァージョンも入手した。
●高円寺の円盤にて

(同上)



2015年 日本のロック

① ザ・テンプターズ『ザ・テンプターズ 50thアニヴァーサリー・コンプリートCD BOX』(7CD)
② UGUISS、佐橋佳幸、EPOほか『佐橋佳幸の仕事 1983-2015 Time Passes On』(3CD)
③ ボ・ガンボス『ボ・ガンボス 1989』
④ 自殺『LIVE AT 屋根裏 1979』
⑤ 安田明、安田明とビート・フォークほか《夜の番外地 ディスコ歌謡~安田明》(全3タイトル)
⑥ J・A・シーザー『身毒丸~PERFECT BOX』(4CD+DVD)
⑦ 桃山晴衣『梁塵秘抄ライヴ'81』
⑧ 鈴木慶一、ムーンライダーズほか『謀らずも朝夕45年 鈴木慶一45周年記念ベスト・アルバム』(3CD)
⑨ 鈴木茂とハックルバック『1975 LIVE』(2CD)
⑩ はっぴいえんど『はっぴいえんどマスター・ピース』(2CD+2LP+ダウンロード・カード)

 特別賞をぐらもくらぶに。これひとつ、というのではなく彼らの作り出す/編み出す作品には、貴重であるだけでなく、これまでとは別な視座がいつも提示されている。勉強になる。しかもマスタリングがすばらしい。これからもよろしくお願いします。戦争について考えることの多かった1年に、たいへん刺激的でもあった。もうひとつ、松任谷正隆の『夜の旅人』もうれしい再発だった。心あたたまるのみならず、まろやかに鋭い作品だ。数はたくさんあって、選んで順位をつけるのにとてもこまった。テンプターズは、“コンプリート”であることとそれにしてはコンパクトに感じられる作りであったことに敬意を表したい。他にもこのようにまとめ直してほしい音源はいくつもある。そのお手本になるといいと思う。“佐橋箱”の選曲の妙。お見事。曲順がいいんです。これは3枚シャッフルせずに聴いていたい。大団円があれだもんなあ。涙ちょちょ切れますよ、まったく。
 聴きなおしてハッとすることの連続だったのがボ・ガンボス。これはリミックスが感動的だった。どんとの目はやはりただものではなかったと改めて思い知らされた。自殺をはじめ79年~81年あたりのこっそりカセット音源はもっとじゃかすか出ないものかとずっと思っているのだが、さすがはいぬん堂。消えていったのではなく、そのときにしかありえなかった音楽、ということだ。安田明にはやられた。オリジナル・マスターからの発掘というからなおさら。どこまであるのかJ・A・シーザー。そのつど唸らせられるからたいへんだ。桃山さんのライヴも貴重。その空間に思いをはせてしまう。慶一さんは現役でいつづける、その休みのなさに驚くが、振り返るとたいへんなことをなんだかあっさりやってきたみたいな気にさせるから不思議。恥じらいぶりが慶一流。ハックルバックのライヴを何度か見た身にはこの盤はむしろ新鮮だった。アナログのリカット盤が今後さらに増えることを期待してはっぴいえんどを入れた。ハイレゾももちろんよろしくお願いします。

『ザ・テンプターズ 50thアニヴァーサリー・コンプリートCD BOX』
(2016年2月号)



2015年 私の収穫

リトル・ブッカー「Teen Age Rock/Open Up The Door」(米ACE 547[SP]1958年)

 ニューオーリンズR&Bは集めはじめてから40年が経つが、ここ15年はひかえめだった。それがちょっと前にスマイリー・ルイスのSPを手に入れてから少し気持が蘇った。特にSPは音が太くて豪快なので格別な味わいがある。これはまだ“Little”がついていたころのブッカー先生。「Teen Age Rock」は見事なオルガンの速弾きが楽しめる。裏面は同じトラックにのせた歌もので「Open Up The Door」。さすがゴンゾ、と声かけたくなる激唱ロックンロール。
●大阪の某店で入手

(同上)



2016年 日本のロック

① 大滝詠一『DEBUT AGAIN』(2CD)
② 遠藤賢司『遠藤賢司実況録音大全[第四巻]1992-1994』(9CD+DVD)
③ ルナパーク・アンサンブル『遊園地を壊せ』(2CD)
④ ザ・タイマーズ『ザ・タイマーズ スペシャル・エディション』(2CD+DVD)
⑤ J・A・シーザー『青少年のためのJ・A・シーザー探究』(2CD)
⑥ GASTUNK『DEAD SONG』(SHM-CD)
⑦ 須山久美子『Les chansons qui filent du reve…』
⑧ 須藤薫『パラダイス・ツアー ライヴ1981』
⑨ カルメン・マキ『アダムとイヴ』
⑩ ビニール解体工場『ビニール解体工場』

 それにしても『弓神楽』には深い感銘を受けた。ここに入れようとも考えた。特別の特別賞ということで御容赦願いたい。音楽の力の凄さ、再生すると場の空気がゆっくりと確実に大きく変わっていく。ぜひ。ロックではないがポップスということでは『ニッポンジャズ水滸伝』がついに「人之巻」で完結したので、これも特別賞に。それからなにより、ぐらもくらぶ。やってくれてますなあ。ありがたいです! 『ニッポン・エロ・グロ・ナンセンス』もロッパ先生、『軍歌・軍国歌謡』もためになったんですが、『浅草オペラからお伽歌劇まで』が個人的びビビビッときました。
 おっと別ワク話でこんなに行数食っちゃった。まさかの⑩。これは30年早かったということか。マキさんの⑨は他の2作も併せてですが、『アダムとイヴ』の全体の素晴らしさはジャケットも込みでこそと思う。カセットで残っていたという⑧は涙もの。こういう清々しくて楽しいコンサートのことを思うと考えさせられることも多い。須山さんの⑦。他の作品ももちろん併せてぜひ。丁寧なマスタリング仕事にも注目を。実は愛聴していた⑥。他にシングル集などもあり、まとめて聴きなおしてほしいパワーありありです。シーザーものはもちろん“ウテナ”も。⑤は、しかしまあ、よくこういうことをやってしまっていたものだなあ、と感慨深い。しかも聴きやすい。なんだかんだいっても現在進行形で④が“有効”なのは幸か不幸か? 音質的に一皮むけている。これを素通りするのはもったいないですよ20代以下のみなさん。思えば折りに触れて『虫喰いマンダラ』を聴いてきたので③は別格。音楽が営み、という人たちでなければ生み出せないもの。②の生々しさは箱を重ねるごとに身に沁みてしかたがなく、胸にずんずん突き刺さる。結局一番聴いたのが①なのだが、アナログのほうは、もったいなくてあまり針が下ろせていない。それから、ラウドネス、プラスチックスの改めてのCD化もありがたいものだった。

(2017年2月号)



2016年 私の収穫

三波春夫『三波春夫・股旅絵巻』(テイチクST2[LP]1964年)

 案外出会わないなあ、と思っていて、やっと手にできた64年発売の三波さんのアルバム。“長編”ではなく“短編集”なのがうれしい。12曲中7曲が台詞入り。ジャケはコーティングのフリップバック。アーティスト名、タイトルの漢字八文字の一つ一つが皆別色なのは三波さんの歌謡が総天然色だということを表わしている、のだと思った。「森の石松」の“親分、馬……馬鹿は死ななきゃ直らねェや――”をはじめ、全編にさわやかなシビレ感あふれています。
●長野県松本市のほんやらどおで購入

『三波春夫・股旅絵巻』
(同上)





2007年 サイケデリック・ベスト10

【新録ベスト10】
① 燻裕理『Migoku』
② ゆらゆら帝国『空洞です』
③ 組原正『hyoi』
④ マーブル・シープ『リュウグウノツカイとルビーのバラ』
⑤ Otomo Yoshihide Invisible Songs『Sora』
⑥ sunn O)))&Boris『Altar』
⑦ Original Silence『The First Original Silence』
⑧ 三杯酢『ニセモノの時代』
⑨ Supersilent『8』
⑩ ノイズわかめ『希望の水』

【再発部門ベスト10】
① Zweistein『Trip Flip Out Meditation』
② Peter Ivers Band『Knight Of The Blue Communion』
③ Pink Floyd『The Piper At The Gates Of Dawn』
④ Patron Saints『Fohhoh Bohob』
⑤ Selda『Selda』
⑥ Moondog『Snaketime Series』
⑦ Ergo Sum『Mexico』
⑧ Marconi Notaro『No Sub Reino Dos Metaoarios』
⑨ M Frog『M Frog』
⑩ V.A.『What’s The Rush, Time Machine Man ? :Psychedelic Jumble,Vol.1』

バトンタッチは許しません
 すごいのなんのって知らない盤しか出ないというような状況ですわリイシューの場合、サイケにおいては。アメリカやイギリスって広いなあ、と思いますよ改めて。こんなん出してたやついるんだなあって、まあ俺が日本でやってきたことも似たようなものだが、それにしてもサイケってワールド・ミュージックなんだからもともと。いろんな国のサイケがぞろぞろ発掘やら復刻されるにつけ、サイケはロック単体で見てたらだめだとよくわかりますね。だもんで現在進行形のサイケはなんかもの足りないものが多い。突き抜けるといったってそう簡単にいけません。いかにもサイケなサイケっておもしろくないでしょう。買う方も楽ではない。何かと不足しがちだし。ネットにいろいろなものが落ちていすぎだし。期待は失望の母とはいえ、薄味のものを無理に塩足して食ってもなあ。というわけでサイケ担当、そろそろ他の方にお願いしたいと思います。どうぞよろしく。

Zweistein『Trip Flip Out Meditation』
 
(「THE DIG」No.51/2007年12月)






湯浅学による解説

 門松はまだしも御飾りをどうするか、と考えるように毎年12月近くなるとその年の振り返り企画について考えることが多くなるのだが、11月の中旬にその年の1月や2月のことを思い返そうとしてやってみると思い出せないことが多い。いや年々思い返しがつらくなっている。それを実感する。時の経つのを早く感じるかどうかは年齢加齢のせいではなく生活状態、心がまえと実際の行動と実感に大きく左右されると思っているが、確かに脳の働きは20年前に較べると悪くなっている、と思う。いや、思いたいだけなんじゃないのか、肉体的に運動不足の慢性化によって動くのが億劫になっていることを他の要因のせいにしているだけなんじゃないのか、と最近よく感じる。だから駅でもエスカレーター、エレベーターを使わずに階段で上がり降りするよう心掛けているのだがそうすると確かに帰宅後体は疲れている。回復が遅い。これはやはり加齢のせいだろう。だから回想のための脳の働きが悪くなるのも長年の脳疲労のせいか。
 「レコード・コレクターズ」は振り返り再考再調査再解読が誌面作りの指針である。再生メディアがアナログ盤からCD中心に変わっていく中で、88年ごろから“CD化”することで古い音源を“新しい音盤”として流通させることは、新しい音楽を新しく録音して新譜として発表することと並ぶ音楽産業の重要事項になっていった。“並ぶ”というのは大げさかもしれないが、CDとしてのカタログを整えること=商品を増やす(多品物化する)ことは88~90年には急務とされていた。それは確かだった。日本の流行歌のロック化はそれより少し前から急速に行なわれていたから、その“旧譜の新譜化”は“ロック化”と並走していたともいえる。おそらく、メディアがCD化しなければ、はっぴいえんど系(あえてこういっておく。いやな区分けだが)の70年代作品の多くが現在のような“定盤化”した聴かれ方をすることはなかっただろう。過去のアーカイヴ化と創作物のデジタル・メディア化はほとんど同時進行(同一の行為である部分も多い)していったわけだが、その一端に自分自身も加わっていたことがこのリストのまとめでよくわかった。同じタイトルの盤が何度もCD化されなおしている(現在進行形)のは、やはり売れるから、興味が失われていないからともいえるが、無理矢理の市場操作というのはしばしばある。CDで復刻されたといっても、プレス枚数が500枚なんてえのは“普通”なわけだから、いつでも買えるようになる=カタログに載る、ということでは決してない。CD化されたら早めに買っておいたほうがいいのは2017年暮れも1990年新春も同様なわけです。とはいえ音響面での技術の進化は当然あるわけで、90年制作盤と2017年制作盤では指向は当然違います。古いから駄目、ということではありません。デジタルだから古くても新しくても同じだろう、なんてとんでもない。CDのほうが個体差は大きいと思います。





湯浅学(ゆあさ・まなぶ)
音楽評論家、ロック・バンド「湯浅湾」リーダー。近著に『ボブ・ディランの21世紀』(音楽出版社)、監修・執筆担当の『洋楽ロック&ポップス・アルバム名盤Vol.3 1978-1985』(ミュージック・マガジン)、2014~2016年にboidマガジンで連載していた「ねこ日記」を加筆・訂正してまとめた『ねこのあと』(青林工藝舎)など。12月26日発売の「ユリイカ2018年1月臨時増刊号 総特集=遠藤賢司」に岸野雄一さんとの対談他が掲載予定。また、1月24日に発売される遠藤賢司さんのライブ盤『ラストライブ “猫と僕と君”』に解説を寄稿。

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